メインコンテンツにスキップ Skip to footer
コグニザントジャパン ブログ

第一回: AI投資は「試行錯誤」から抜け出せるか — なぜ成果に結びつかないのか

— なぜ成果に結びつかないのか

 「AIに投資しているのに、なぜ成果が見えてこないのか」。

この問いを抱える経営者や事業責任者は、決して少なくありません。生成AIの登場から数年が経ち、多くの企業がPoC(実証実験)を重ねてきました。しかし、その多くが「試してみた」で終わり、事業の数字を動かすところまで届いていない、というのが実情です。

数字が示す、 AI投資の現状

コグニザントが実施した調査「New Frontiers, New Friction」(2026年)は、G2000企業を含むグローバル企業を対象に、AIへの期待と実際の成果との間にあるギャップを明らかにしました。

ビジネス生産性の具体的な向上を実感できている経営幹部はわずか32%。41%は、今後数年間は効果が出ないと予想していることがわかりました。組織の4分の1がAI導入を一時停止・中止し、これによって平均的な企業は年間400万ドルの投資を無駄にしていると推計されました。そして、半数近くの企業が、AI投資と具体的なビジネス価値・ROIを効果的に結びつけられていないと回答しました。

一方で、同調査は「成果を出せている企業」も確かに存在することを示しました。技術基盤が成熟しており、かつ投資領域を絞り込んでいる企業群は、そうでない企業群より成果スコアが31%高く、実に70%が既に何らかの成果を実感していることがわかりました(成果を実感できていない企業群では、この数字は42%にとどまりました)。この差をG2000企業全体に当てはめると、年間4.7兆ドル規模の未実現価値になると推計されました。

この傾向は、日本企業においても例外ではありません。同調査で日本企業を対象に実施したところ、自社の従業員の半数以下しかAIにアクセスできていないと回答した経営層は、実に80%。AIが実際の業務フローに組み込まれていると実感している従業員は37%にとどまっていることがわかりました。さらに、ROI(投資対効果)が出ないことを理由にAIの導入を中断・一時停止した日本企業は33%。既存の技術インフラが足かせになっていると回答した企業は30%、データのプライバシーとセキュリティが障壁になっていると回答した企業は42%にのぼりました。

これらの数字が語っているのは、「AIの性能が足りない」という話ではありません。グローバル・日本を問わず、多くの企業が、AIを本格的に事業へ組み込む前の段階で足踏みしている、という構造的な問題です。そして、その差を分けているのは、技術そのものではなく、基盤への投資の仕方と、投資領域を絞り込めているかどうかなのです。

問題は技術ではなく、組織の側にある

なぜ、こうした足踏みが起きるのでしょうか。私たちは、企業がAI投資を価値に変えられない理由を、3つの問いに整理しています。

一つ目は「WHY」。なぜ自分たちはAIに取り組むのか。つまり、自社の価値創出に向けて、経営陣がどこへ向かうのかという方向性を示せているかということです。二つ目は「WHAT」。AIを取り入れることで、どのような成果を目指すのか。実行を担う現場と、社内のステークホルダーが、目指す成果について共通の認識を持てているかを考える必要があります。そして三つ目は「HOW」。自分たちが設計したシナリオを、どのように実装し、どのように具体的に実現していくのか。一つのパイロットプロジェクトの成功を、組織全体にスケールさせるノウハウと時間を確保できているかが問われます。

多くの企業では、この3つのいずれか、あるいは複数が欠けたまま、AIツールの導入だけが先行しまいがちです。結果として、パイロットは動くものの、それが「試行錯誤のための暫定投資」の繰り返しにとどまり、次の一手に資金を逐次投入せざるを得ない状態が続くのです。

私たちがここで強調したいことは、この足踏みは、AIモデルの性能をさらに引き上げれば解決する、という話ではないということです。 AIモデルを開発している企業は、強力で汎用的なモデルを提供してくれますが、ある企業が数十年かけて積み上げてきた業界特有の知識や業務プロセスといった「コンテキスト(文脈)」までは、当然持ち得ません。つまり、モデルという「エンジン」の性能をいくら上げても、それだけでは企業ごとの事情に合わせて動かす部分が欠けたままなのです。だからこそ、企業はモデルへの投資を続けても、なかなか成果に結びつかず、待ち続けることになるのです。

コグニザントは、「ニュートラルなAI Builder」である

こうした課題に向き合う中で、私たちコグニザントが位置づけているのは、単なるAI導入・統合パートナーという役割ではありません。

私たちは、企業固有の業務知識やデータ、業務プロセスを組み込んだうえで、AIプラットフォーム、エージェント型ワークフロー、業務アプリケーション、AIモデルを設計・構築・運用する存在——すなわち「AI Builder」であることを目指しています。技術を導入すること自体がゴールではありません。ビジネス成果に対して責任を持ちながら、AIへの投資を実際の企業価値へと変換すること。それこそが、私たちがAI Builderという言葉に込めている意味です。

この立場を支えているのが、3つの特徴です。一つ目は、特定のAIモデルやクラウドに縛られない、ニュートラル(中立)な立場であること。多くのAIプロバイダーは自社のプラットフォームの上で顧客企業を動かしたいと考えますが、私たちは、企業が既に選んでいるどの環境の上でも価値を提供します。二つ目は、数十年にわたり企業の業務に深く埋め込まれてきた実績であること。三つ目は、一度きりの導入で終わらず、成果が出続けることに対して責任を持つ商業モデルであること。これらが組み合わさることで、私たちは技術を届けるだけでなく、その先の成果まで併走する存在になれると考えています。

すでにこの考え方のもとで、具体的な成果を上げ始めている企業もあります。数日かかっていたカスタマーサービス業務を90秒で完結させたケースや、異議申立・苦情処理のトリアージ精度を90%以上に高めたケースなど、中核業務そのものにAIを適用し、事業の将来性を左右する成果を生み出す事例が積み重なってきています。

AI Builderを支える3つの軸

コグニザントの「AI Builder」としての取り組みは、大きく3つの軸で展開しています。基幹システムをAIネイティブに刷新するModernize with AI、自律的に動くAIエージェントを構築・運用するBuild and Scale Agentic AI、そしてセンサーや設備といった物理世界にAIをつなぐConnect AI to the Physical Worldです。

この3つの軸はいずれも、先ほど紹介した「ニュートラルな立場」「数十年の実績」「成果への責任」という私たちの姿勢のもとで提供されています。

このシリーズについて

このシリーズでは、3つの軸のうち、まずAgentic AIの領域を深く掘り下げていきます。多くの企業が試行錯誤から抜け出せない理由——AIを個別のタスクではなく、業務の入口から出口まで責任を持って動かす仕組みが作れていないこと——に、最も直接的に答えるのがこの領域だからです。

次回は、そのAgentic AIを支える「3つの鍵」——Context Engineering、Enterprise Agent Network、Sustainable Governance——について解説します。




この記事の投稿者

渡辺 宣彦

コグニザントジャパン株式会社
代表取締役社長

渡辺 宣彦

2025年11月付でコグニザントジャパン株式会社 代表取締役社長に就任。

エンタープライズ企業における大規模なDX推進や、戦略的なクライアントパートナーシップ構築における確かな実績を背景に、数十年にわたるリーダーシップ経験と業界の知見を活かしてコグニザントジャパンを統率。

直近では、日本マイクロソフト執行役員 常務としてエンタープライズ事業本部を統括し、それ以前は、ペガシステムズやアクセンチュアなど大手グローバルIT企業で要職を歴任。特に日本国内におけるオフショアリングやグローバルソーシングに関わる数多くの複雑な変革プロジェクトを成功に導いてきた実績を持つ。

慶應義塾大学法学部卒、 オーストラリア・ボンド大学にてグローバルリーダーシップMBA取得、 元早稲田大学創造理工学部非常勤講師



コグニザントジャパンブログ
コグニザントジャパンブログ

ビジネスの未来を左右するトレンドを把握し、変化の激しい時代を勝ち抜く。

In focus image


最新記事
関連記事