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New frontiers,

new frictions - 新たな可能性、新たな障壁

AI導入の実態を読み解く

1万人以上の従業員を対象としたグローバル調査から、AI導入のギャップの背景にある、これまで見過ごされてきた従業員層の存在と、6兆ドル規模の潜在的な生産性向上の可能性が明らかになりました。

New frontiers,

new frictions - 新たな可能性、新たな障壁

AI導入の実態を読み解く

1万人以上の従業員を対象としたグローバル調査から、AI導入のギャップの背景にある、これまで見過ごされてきた従業員層の存在と、6兆ドル規模の潜在的な生産性向上の可能性が明らかになりました。

企業はAIに多額の投資を行っています。しかし、マクロ経済レベルで見ると、生産性は依然として伸びていません。今回、20を超える主要な国・地域、幅広い業界の1万人以上の従業員を対象に実施した最新調査から、その理由が明らかになりました。課題はテクノロジーそのものではなく、それを使う人にあります。AIを利用する際の障壁が大きければ、活用は進まず、期待される経済効果は生まれません。

調査の結果、こうした障壁が従業員の間に広く共通して存在することがわかりました。多くの従業員は、現在の業務環境では十分にAIを活用できておらず、さらに活用したいと考えています。また、所属する組織から提供されているAIツールに満足していない従業員が大半を占めています。

さらに、企業は従業員を一様に捉えてAIを導入する傾向がありますが、実際のAI導入・活用状況は、従業員のタイプによって大きく異なります。画一的な導入方法そのものが、AI活用を妨げる大きな要因になり得るのです。

AIの技術的な可能性と実際の成果とのギャップを埋めることをテーマとした一連の調査の一環として、今回は、従業員自身がAIの導入を促進、あるいは停滞させる要因について検証しました。

回答者に、テクノロジーや仕事、AIに対する考え方について詳しく質問した結果、現在の従業員には60を超えるペルソナが存在することがわかりました。これらは、AIへの関わり方や利用経験が異なる7つの利用者タイプに分類されます。また、AIの導入を促進するために必要な取り組みも、タイプごとに異なります。

今回の調査では、7つのタイプを通じて、AI導入に共通するいくつかの課題が明らかになりました。いずれも、数兆ドル規模の潜在的な価値の創出を妨げている、具体的かつ解決可能な課題です。

従業員はAIを活用したいと考えているものの、効果的に活用できる環境が整っていない

80%

80%の従業員が「アクティベーション・ギャップ」を感じています。これは、従業員が理想とするAI活用と、実際の活用状況とのギャップを示す指標です。

AIを活用したいという意欲がありながら、スキル不足や利用環境の制約、AIが生成する結果への懸念など、さまざまな要因によって十分に活用できていない従業員には、まだ大きな可能性が残されています。

最大82%

最大82%の従業員が、所属する組織から提供されているAIツールに満足していません。

すべての利用者タイプにおいて、大多数の従業員が、現在使用しているAIツールではニーズを満たせていないと考えています。

72%

72%の従業員が、スタルワート(堅実な実践者)とナビゲーター(意欲的な活用者)という2つの利用者タイプです。

この2つのタイプは、いずれもアクティベーション・ギャップが最も大きいため、企業が特に重視すべき層です。世界全体の労働生産性が一律に5%向上するだけでも、世界のGDPを約6兆ドル押し上げる可能性があります。

AI利用者のタイプを理解する

7つの異なる従業員タイプ

調査の開始当初から、私たちは従業員を均質な一つの集団として捉えることには限界があると考えていました。仕事やリスク、テクノロジーに対する考え方は、人によって異なります。こうした考え方や向き合い方の違いが、従業員のAI活用意欲にどのような影響を与えるのかを理解することが重要だと考えました。

7つのタイプを設定するにあたり、まず回答者に、テクノロジーのリスクやメリット、仕事そのものに対する考え方について詳しく質問しました。そのうえで、これらの回答とAIの利用経験を照らし合わせて分析しました。

次に、各タイプの特徴を把握するため、従業員がAIをどの程度活用しているかを示す「アクティベーション指数(AQ)」と、AI活用における理想と実際の行動とのギャップを示す「アクティベーション・ギャップ(AG)」を設定しました。

下の図は、現在の従業員を構成する7つの利用者タイプを、アクティベーション指数(AQ)の高い順に示したものです。

アクティベーション指数について

アクティベーション指数は、現在のAI活用状況、今後への期待、スキルレベル、所属する組織の環境への対応状況をもとに、従業員がAIをどの程度活用しているかを評価する指標です。

アクティベーション指数は、Action(行動:現在行っていること)、Aspiration(意欲:実現したいこと)、Ability(能力:利用できる環境やリソース)、Conditions(環境:所属する組織のAI導入方針との一致度)という4つの要素で構成されています。

従業員全体の平均値である61を上回るタイプは、適切な支援があればAIを活用する可能性が高いと考えられます。一方、平均を下回るタイプでは、AI活用を促すために、より多くの働きかけが必要になります。

アクティベーション・ギャップについて

従業員のAI活用状況だけでは、全体像を把握することはできません。そこで、従業員のAI活用をどの程度容易に促進できるか、また、そこからどの程度の効果が期待できるかを把握するために、「アクティベーション・ギャップ」という指標を設定しました。これは、従業員が理想とするAI活用と、実際の活用状況とのギャップを測るものです。つまり、従業員にまだどれだけの可能性が残されているかを示しています。

アクティベーション・ギャップがプラスの場合は、まだ引き出されていない可能性があることを示します。一方、マイナスの場合は、そのタイプがすでにAI活用の可能性を十分に引き出していることを意味します。

7つの利用者タイプ

図1 

*アクティベーション指数(AQ)とアクティベーション・ギャップ(AG)

注: AQが従業員全体の平均値である61を上回るタイプは、AIを活用する可能性が高いと考えられます。一方、平均を下回るタイプでは、AI活用を促すために、より多くの働きかけが必要になります。

調査対象: 10の国・地域、複数の業界に属する従業員10,000人

出典: Cognizant Research

7つの利用者タイプ

図1 


注: AQが従業員全体の平均値である61を上回るタイプは、AIを活用する可能性が高いと考えられます。一方、平均を下回るタイプでは、AI活用を促すために、より多くの働きかけが必要になります。

調査対象: 10の国・地域、複数の業界に属する従業員10,000人

出典: Cognizant Research

主な調査結果

従業員のAI活用における4つの課題に注力し、AIの潜在能力を引き出す

調査結果 01

AIツールへの不満が広がっている

すべての利用者タイプで、所属する組織のAI導入方法に対する不満が広く見られます

どのタイプでも、72~82%の従業員が、現在使用しているAIツールではニーズを満たせていないと回答しています。プレシジョニスト(熱心な活用者)は、使用しているツールへの評価が最も高いものの、現在のAIツールに満足している割合はわずか28%です。これは7つのタイプの中では最も高い数値ですが、それでも依然として低い水準です。必要なAIツールを十分に利用できていない状況は、すべての従業員タイプに共通しています。その中でプレシジョニストは、他のタイプと比べ、さまざまな方法でその不足を補っています。

特に注目すべきなのが、アーキテクト(先進的な活用者)です。所属する組織のガバナンスフレームワークを信頼し、AIリスクへの対応方針にも賛同しているにもかかわらず、87%が、承認されたツールではニーズを満たせない場合に、組織が承認していないツールを利用しています。ガバナンスのフレームワーク、あるいは提供するAIツールのいずれかを見直す必要があります。

結論

AIツールへの不満は、すべての従業員タイプに共通しています。そのため、利用状況だけを基準にAI導入を評価すると、進捗を過大評価してしまう可能性があります。効果的にAI活用を促進するには、まずツール、ワークフロー、利用環境への投資が不可欠です。

調査結果 02

生産性には、さらなる向上の余地がある

従業員の80%は、アクティベーション・ギャップがプラス

これは、従業員に残された可能性を引き出すことで、企業がAIで大きな価値を実現できる可能性があることを意味します。そこで、どこに最も大きな可能性があるのかを把握するため、回答者に現在の生産性向上率と、最適なツールやリソースが提供された場合に期待できる向上率を比較してもらいました。

その差は顕著でした。現在の生産性向上については、0~10%程度にとどまるという回答が多く見られました。一方、理想的な支援が得られた場合には、10~20%、あるいはそれ以上の大幅な向上を期待する回答が大きく増えました。例えば、世界全体の労働生産性が一律に5%向上するだけでも、世界のGDPを約6兆ドル押し上げる可能性があります。

結論

従業員がAIを活用できるよう、適切なツールやリソース、スキル、意欲を高めるための支援を提供することで、大きな経済効果が生まれます。アクティベーション・ギャップは、その可能性がすでに従業員の中にあり、まだ十分に引き出されていないことを示しています。

下の表は、特に大きな可能性が残されている従業員タイプを示しています。

利用者タイプ別の生産性向上の可能性

図2 


注: 生産性向上率は、自己申告による効果を、「0~10%」「10~20%」「20%超」の3段階に分類しています。
アクセラレーターとプレシジョニストは、すでにAIを最大限に活用しているため、現在の活用状況と理想とする活用状況とのギャップを埋めても、さらなる生産性向上は期待できません。

調査対象: 10の国・地域、複数の業界に属する従業員10,000人

出典: Cognizant Research

下の表は、特に大きな可能性が残されている従業員タイプを示しています。

利用者タイプ別の生産性向上の可能性

図2 


注: 生産性向上率は、自己申告による効果を、「0~10%」「10~20%」「20%超」の3段階に分類しています。


アクセラレーターとプレシジョニストは、すでにAIを最大限に活用しているため、現在の活用状況と理想とする活用状況とのギャップを埋めても、さらなる生産性向上は期待できません。



調査対象: 10の国・地域、複数の業界に属する従業員10,000人

出典: Cognizant Research

調査結果 03

AIは比較的単純な業務に利用されている

どの利用者タイプでも、約3分の1の従業員がAIを比較的単純な業務に利用していますとします。

具体的には、データ分析やレポート作成、要約、プレゼンテーション資料の作成などです。一方、戦略立案や予算策定、自律型AIエージェントへの指示といった、より複雑で戦略的な業務でのAI活用は大幅に少なくなっています。

しかし、AIを積極的に活用している従業員と、そうでない従業員を比較すると、大きな違いが見られます。アーキテクトとアクセラレーターでは、平均28%がすでにAIをより複雑な業務に活用しているのに対し、ホールドアウトではわずか15%です。

この結果は、AIを積極的に活用する従業員と、活用していない従業員との間で格差が広がっていることを示しています。アーキテクトとアクセラレーターが、人間ならではのスキルとAIの能力を組み合わせることで自らの役割を変化させている一方、AI活用が遅れているタイプでは、AIを単なる効率化のためのツールとして捉える傾向があります。こうしたAI活用の格差は、やがて業務成果の差となって表れ、人材の評価や配置などの判断にも影響する可能性があります。そうした判断が行われてからでは、AI活用の格差を縮めることはより難しくなります。

結論

企業のリーダーは、アーキテクトとアクセラレーターを特定し、AIをより複雑な業務に活用するための事例を参考にするとともに、AI活用が遅れている従業員にも、より高度な活用方法を示すべきです。

調査結果 04

多様な人材には、それぞれに合ったアプローチが必要である

これまで、従業員へのAI導入は画一的に進められてきました。しかし、今回の調査から、すべての従業員に有効な単一のAI戦略は存在しないことが明らかになりました。

7つの利用者タイプには、それぞれの特徴に応じたAI導入のアプローチが必要です。アクセラレーターとアーキテクトには、現在のAI活用方法に合ったガバナンスの整備と、そこで得られた知識やノウハウの蓄積が有効です。プレシジョニストについては、組織がまず、彼らが独自に構築したAI活用の仕組みを理解したうえで、展開を広げる必要があります。ナビゲーターには、AIツールを利用できる環境と権限が必要です。一方、プラグマティストには、信頼できる同僚による実際の活用事例を示すことが、AI活用の後押しになります。スタルワートには、AIを安心して利用できる環境と、自身のキャリアにどう役立つのかを示すことが必要です。ホールドアウトには、基礎的なAIスキルを身につけるための継続的な支援が求められます。

結論

企業は、従業員のニーズを正しく把握し、それぞれのタイプに応じた対応を行う必要があります。そのためには、従業員の行動特性に基づいてタイプを分類し、各タイプが直面する課題に合った支援を行うことが重要です。

81% vs. 56%


研修効果の逆転

研修という基本的な取り組み一つをとっても、利用者タイプによって大きな違いが見られます。AI研修を受講した従業員のうち、AI活用が進んでいるアーキテクトでは81%が研修を「効果的」と評価しているのに対し、活用が最も遅れているホールドアウトでは56%にとどまります。つまり、研修を最も必要としている従業員ほど、その効果を十分に得られていないのです。

さらに、必須のAIトレーニングが提供された場合、受講を完了する割合はアーキテクトの83%に対し、ホールドアウトではわずか53%です。多くの組織がAIスキル向上の主な手段としている必須トレーニングは、必要性の低い従業員には届いている一方で、AI活用を促すことが最も難しい従業員をさらに取り残す結果となっています。

6兆ドルの価値を引き出す鍵は、従業員の実態に即したアプローチ

今回の調査から、タイプによる違いはあるものの、世界の従業員の多くがAIを活用したいと考えており、実際に現在よりもさらに活用したいと望んでいることがわかりました。これは、あらゆる組織が認識すべき重要な事実です。

AIの価値は、テクノロジーそのものではなく、実際に活用されることで生まれます。AI導入の障壁が大きければ、その効果も小さくなります。そこで重要になるのが、多様な従業員の実態やニーズに即した戦略です。

本レポートで示した7つの利用者タイプは、そのための道しるべとなります。それぞれのタイプを理解し、適切に対応できる組織こそが、AIが持つ可能性を実際の生産性向上へとつなげることができます。AIを活用したいと考える従業員と、そのニーズに応えられる組織。その両者がそろうことが、AIの価値をいち早く実現するための鍵となります。

各利用者タイプの詳しい特徴と、それぞれに適した支援策については、レポート全文をダウンロードしてご覧ください。

リサーチ


Ollie O’Donoghue

Head of Cognizant Research

Duncan Roberts

Associate Director, Cognizant Research

編集

Mary Brandel

Editor