新たな価値観、
新たな市場
AIの活用に積極的な消費者は、2030年までに最大55%の消費支出を牽引すると予想されています。AIを活用する新時代の顧客と、未来の市場を形成する要求、ニーズ、期待を深く理解することで、他社に先駆けたAI導入を実現することができます。
図1
分析の結果、各グループに統計的に最も関連性が高い人口統計学的な特徴が明らかになりました。特徴はそれぞれ独立しており、必ずしもグループ内のすべての消費者に当てはまるわけではありません。
調査対象: 米国、英国、ドイツ、オーストラリアの回答者8,451名
出典: CognizantおよびOxford Economics
図1
分析の結果、各グループに統計的に最も関連性が高い人口統計学的な特徴が明らかになりました。特徴はそれぞれ独立しており、必ずしもグループ内のすべての消費者に当てはまるわけではありません。
調査対象: 米国、英国、ドイツ、オーストラリアの回答者8,451名
出典: CognizantおよびOxford Economics
アクセラレータとアーリーアダプターの購買力が強くなるにつれ、両者が各業界における変革を推進していくでしょう。しかし、アンカーも企業にとって引き続き重要な消費者グループであり、維持・対応していく必要があります。
一方、本調査では、これら4つの消費者グループすべてに共通するインサイトも明らかになりました。企業がAIを活用して消費者と交流する方法を模索する上で、これらの調査結果は重要な考慮事項となります。
利便性が普及を促進する
すべての消費者にとって、AIを利用する最大の理由はその利便性です。調査対象者の75%が購買プロセスに対する不満を抱えており、これが時間の節約につながるAIソリューションの利用へと向かわせる要因となっています。実際、22%の消費者がAIを利用する最大の理由として時間の節約を挙げているのに対し、AIをベストな選択肢を見つけるための手段として考えている消費者はわずか12%でした。
自分でコントロールできることが重要である
利便性を求める一方で、消費者は特に最終的な購入選択や決済において、自らコントロールできることを重要視しています。注目すべき点として、75%の回答者が、自らの承認なしでAIが高額商品の再注文や決済を自動的に行うことを認めないと回答しています。
親しみが信頼を生む
調査結果は、スマートフォンやアプリなど身近なデバイスやユーザー体験にAIを組み込むことで、すべての消費者グループでAIの利用が促進されることを示しています。消費者はすでに、モバイルバンキング (52%が快適に利用) や旅行予約 (44%が快適に利用) など、モバイル端末を使った機密性やリスクが比較的高い行動に対して抵抗を感じていません。同じことがAIでも起こるかもしれません。日常的なデバイスにAIがシームレスに統合されることで、消費者がAIツールに触れる機会が増え、不信感や不安が薄れ、より一層受け入れられやすくなる可能性があります。
満足度指数は、AIツールの利用に対する消費者の満足度を評価する総合スコアです。このスコアは、購買プロセスの3つのステージにおける消費者のAIツール利用に対する満足度を、15業界・36種の製品・サービスを対象に、調査データと詳細なインタビューを基に算出したものです。
スコアが高い = 満足度が高い
スコアが低いr = 満足度が低い
消費者は、「学習」フェーズで最も快適さを感じており、次いで「利用」、そして「購入」の順となっています。
この「学習」フェーズは、消費者のAIツールの利用に対する満足度が最も高い段階であり、満足度指数の平均スコアは47となっています。そのため、企業が最初に注力すべき最も重要なフェーズであると言えます。しかし、消費者グループ間のスコアには大きな差があります。アーリーアダプターとアクセラレータのスコアはそれぞれ58、50と高いのに対し、アンカーのスコアは33にとどまっています。
意思決定を行う段階では、消費者が慎重になる傾向が見られます。「購入」フェーズにおける平均満足度指数はわずか27にとどまっています。アーリーアダプターでさえ、購入の実行にAIを利用することには慎重で、そのスコアは34と比較的低い数値となっています。アンカーは特に消極的で、スコアはわずか16にとどまりました。
消費者のAIに対する満足度は、購入後のエンゲージメント・フェーズで再び上昇し、満足度指数は39に達しました。このスコアを押し上げたのは、アーリーアダプターで、彼らのスコアは47と高い数値を示しています。また、意外なことに、アンカーもスコアの上昇に大きく貢献しています。34というスコアが示すように、「利用」フェーズは、アンカーがAIを最も快適に活用できる段階であることがわかります。
図2
調査対象: 米国、英国、ドイツ、オーストラリアの回答者8,451名、および詳細な消費者インタビュー80件
出典: Cognizant Research analysis of data collected by Oxford Economics and YouGov
従来の検索への不満が、利便性への欲求を生み出す
消費者がAIを利用する最大の理由は時間の節約であるため、「学習」の段階では利便性が特に重要です。膨大な情報が飛び交う市場では、消費者は自分が探しているものをできるだけ早く見つけたいと考えています。音声アシスタントに自分の嗜好に基づいた提案をさせたり、ソーシャルメディアでスクリーンショットを撮ったブランドや商品を視覚検索で特定したりなど、手段はさまざまです。
音声アシスタント、対話型AI、パーソナライズされた推奨事項、視覚検索などのAIツールは、消費者が求める迅速でスムーズな検索プロセスを実現します。こうしたツールは、消費者の満足度レベルで最も高い評価を得ています (図3参照)。この段階では、AIがアシスタントとして機能し、選択肢を絞り込み、検索プロセスを効率化する役割を果たしています。
定性調査においては、複雑な検索を簡単にできる点で対話型AIが高く評価されており、「ほとんど手間をかけずに複雑な情報を見つけ、理解できる素晴らしいツールだ」という意見が寄せられています。また、視覚検索については、検索スピードの速さが支持され、「名前がわからない特定の商品を簡単に見つけられて便利だ」といった意見が見受けられれました。
消費者はAIによる検索結果の根拠を必ずしも信頼していない
しかし、利便性を追求する一方で、アクセラレータやアーリーアダプターでさえ、プライバシーの保護、信頼性、透明性の重要性を訴えています。例えば、ダイナミックプライシングやターゲット広告は、裏で操作されているのではないかという懸念や過剰請求などへの警戒感から、満足度の評価が低い傾向にあります。ある回答者は、「自分の検索履歴がすべて蓄積され、それがターゲット広告のために利用されていると考えると恐ろしい」と述べています。また、パーソナライズされた推奨は、その的確さが評価される一方で、精度を欠いた場合にはすぐに信頼を損なう可能性があるという課題もあります。
消費者はまた、AIの真の意図に疑問を抱いています。AIは本当に自分にとって最適な選択をしているのか?それとも企業の提携先やより利益をもたらす業者を贔屓しているのではないか?すべての消費者グループに共通して、AIが必ずしも自分たちの利益のために働いているわけではない、という不信感が挙げられており、13%の消費者がこれを最大の懸念事項だと回答しています²。
図3
調査対象: 米国、英国、ドイツ、オーストラリアの回答者8,451名
出典: CognizantおよびOxford Economics
調査対象: 米国、英国、ドイツ、オーストラリアの回答者8,451名
出典: CognizantおよびOxford Economics
ビジネスへの影響
消費者の心をつかむための新たな戦いが始まり、従来の手法は通用しなくなっています。市場から取り残されることを避けるためには、AIツールを活用し、自社の製品・サービス・体験を消費者に確実に訴求するための運用モデルを構築することが必要です。短期的には従来の検索手段の提供を続けることも求められます。
消費者は決定権を手放すことを恐れている
消費者は、AIに決定権を渡し、購入を代行させることによる影響を不安視しています。例えば、AIが意図しない数量を注文したり、想定以上に高額な商品を選んだりすることで、修正や取り消しが難しくなるのではないかということを懸念しているのです。注文するコーヒーブランドをAIが自動的に選択することに慣れている消費者でさえ、「購入」ボタンをクリックするという一見些細な行為については、自分自身でコントロールしたいと考えています。
定性調査では、AIの誤作動や不正確さに対する不安の声が数多く寄せられました。ある回答者は、「音声アシスタントは指示を誤解することが多い。画面がないため、自分が正しく操作できたかどうか確認できない」と不満を述べています。データのセキュリティも懸念事項のひとつです。「AIに自分の情報を使わせたり、支払いを簡単にするために保存させたりすることに抵抗がある」と別の回答者は述べています。
AIの判断基準に対する不信感を抱く消費者も少なくありません。ある消費者は、「アルゴリズムは最高額入札者の指示に従うだけで、自分の利益を考えた購入をしてくれない気がする」と述べています。
人気のあるAIツールでさえ満足度が急落
AIを積極的に利用するユーザーでさえ、「購入」フェーズで意思決定権を手放すことには慎重です。「学習」フェーズと比較すると、アクセラレータの満足度指数は50から33に、アーリーアダプターの満足度指数は38から34に低下しています。具体的には、「学習」フェーズでは、アクセラレータの41%、アーリーアダプターの52%が対話型AIの利用に抵抗がないのに対し、「購入」フェーズではそれぞれ33%と46%に低下しています(図4参照)。音声アシスタントにも同様の傾向が見られます。「学習」フェーズでの満足度はアクセラレータが38%、アーリーアダプターが53%であったのに対し、「購入」フェーズではそれぞれ30%と42%に低下しています。
興味深いことに、顔認証のようなセキュリティ技術は、購入フェーズにおいて他の技術と同様に支持されています。この傾向は特にアンカーの間で顕著です。ある消費者は、これを「追加の認証と保護レイヤー」と称しています。
図4
調査対象: 米国、英国、ドイツ、オーストラリアの回答者8,451名
出典: CognizantおよびOxford Economics
調査対象: 米国、英国、ドイツ、オーストラリアの回答者8,451名
出典: CognizantおよびOxford Economics
ビジネスへの影響
「購入」段階において、消費者は自分自身でコントロールできることを強く求めています。AIソリューションの安全性と目的に対する信頼が高まるにつれ、こうした慎重な姿勢はこれから変化していく可能性もありますが、現時点では不信感が課題となっています。企業には、自動化と消費者に一定のコントロールを委ねることとの間で、適切なバランスを取ることが求められます。
消費者は自動化された製品やサービスに魅力を感じている
常に時間の節約を求める消費者にとって、製品やサービスの維持管理、再補充、アップデート、機能拡張といったプロセスをAIが自動化することは非常に魅力的です。この段階でAIが関与することで、非接触型の体験が実現されることが多くなります。現実的な例としては、よく使う食品を自動で再注文する冷蔵庫や、燃費を節約するカスタマイズ機能を搭載した自動車、エラーコードを検知してメーカーにメールを送信し、専門的な修理を依頼する家庭用暖房システムなどが挙げられます。
いずれの例においても、消費者は大幅な時間の節約とストレスの軽減を体験しています。ある消費者は次のように述べています。「AIが製品やサービスの利用をサポートしてくれるのは本当にありがたいです。節約できた時間で他のことができますからね」
消費者にとって、AIは生活を便利にしてくれる見えない存在として認識されていくでしょう。ある回答者はこう述べています。「AIって当たり前の存在なんです。特に意識するものじゃないんです」
しかし、自動再購入に対しては抵抗感がある
「利用」フェーズの満足度レベルが高まる一方で、アフターセルスにおける完全自動購入に対しての抵抗感は残っています。「購入」フェーズと同様に、自分でコントロールしたいという欲求がここでも強く、実際のニーズよりも収益向上を目的として、高価格の商品を再注文するなど、AIが必ずしもユーザーの利益を最優先にするとは限らないのではないかという懸念が見られます。ある消費者は次のように述べています。「AIが製品やサービスを自動的に再注文してくれるのは便利だと思いますが、プライバシーや購入のコントロールに不安を感じます。自分のニーズを誤って解釈して、望まない商品が届くようなことにならないでしょうか」
自動再注文や自動決済に対しする満足度が最も高いのはアクセラレータですが、その満足感も価格の上昇に伴って低下する傾向があります。たとえば、25ドル程度の低価格商品についてはアクセラレータ43%がAIによる自動再注文に抵抗がないと回答していますが、100ドルの中価格帯商品では36%、500ドルの高価格帯になると、その割合はわずか32%にとどまります。すべての消費者層を見ると、各価格帯における満足度指数は、それぞれ28%、22%、18%に低下しています。
図5
調査対象: 米国、英国、ドイツ、オーストラリアの回答者8,451名
出典: CognizantおよびOxford Economics
調査対象: 米国、英国、ドイツ、オーストラリアの回答者8,451名
出典: CognizantおよびOxford Economics
ビジネスへの影響
「利用」フェーズにおける高い満足度指数は、消費者が購買後も長期的に関与したいという意欲の高さを示しています。これは、企業が顧客との関係を構築する機会であると同時に、AIツールの利用に慣れ親しむ機会でもあり、AIのさらなる活用を後押しすることにもつながります。
「利用」フェーズは、アフターサービスと自動再注文といった分野で新たな収益源を生み出す可能性もあります。しかし、これは中間業者にとっては破壊的な変化となる恐れもあります。OEMと消費者間に新たな販売チャネルが確立されれば、従来の小売業者のビジネスは影響を受けるでしょう。そして、スマート製品メーカーとのパートナーシップを持たない企業は、そうした機会を逃すリスクがあります。
* アクセラレーター層の消費額は、米国だけでも現在の4.1兆ドルから2030年には4.4兆ドル以上に増加すると予測されています。
図6
出典: Cognizant Research with economic data provided by Oxford Economics
* アクセラレーター層の消費額は、米国だけでも現在の4.1兆ドルから2030年には4.4兆ドル以上に増加すると予測されています。
図6
出典: Cognizant Research with economic data provided by Oxford Economics
ベッドの購入プロセス
図7
出典: Cognizant Research analysis
図7
出典: Cognizant Research analysis
「学習」フェーズにおいては、消費者は選択肢が多すぎることへのストレスを軽減してくれるAIツールに魅力を感じる傾向があります。この重要な分岐点で消費者の関心を引くためには、新たなエンゲージメントのルールが必要になります。
たとえば、製品を調べたり見つけたりする際に、音声アシスタント、視覚検索、対話型AIといったAIツールを利用することが一般化していくと、企業は製品・サービス情報の発信においてマルチモーダルなアプローチを取る必要があります。製品説明は、音声アシスタントによる読み上げや、対話型AIとのやり取りに適した、簡潔でわかりやすい表現が求められる一方で、視覚検索に最適化された高品質な画像や動画の活用も欠かせません。
企業が「発見」フェーズで消費者の認知を獲得した後は、満足度指数が最も高い「利用」フェーズへと進みます。「利用」フェーズに移行することで、販売後も顧客との関係が継続し、製品やサービスとのAIを介した継続的なエンゲージメントを通じて、信頼を強化する機会を得ることができます。
企業はこの信頼を土台として、「購入」フェーズに進み、AIが自動購入することに対する消費者の信頼を醸成することができます。その際には、消費者が一定の操作性を確保できることも重要な要素となります。AIによる学習支援で得られたポジティブな体験を、製品の使用や購買プロセス全体にまで広げていくことで、企業はAI時代にふさわしい一貫性のあるカスタマージャーニーを構築することができるのです。
企業にとって最も重要なAIプロジェクトは、社内にAIを導入することではなく、自社の製品・サービスがAIドリブンなプラットフォーム上で確実に認知されるようにすることかもしれません。消費者側のAIエージェントが一般化していくなかで、企業側もそれらのエージェントと連携可能なAIエージェントを備えておくことが求められます。そのためには、新しいインフラとデータ機能が必要になります。
これを実現するには、消費者向けプラットフォーム上でAIがどのように利用されているか、また、自社の製品・サービスをそうした環境にどう組み込めるかを深く理解することが不可欠です。たとえ社内で強固なAIソリューションを構築できたとしても、消費者がすでにAIを日常的に利用しているプラットフォームと連携できなければ十分とは言えません。
自社の製品・サービスをAIに認知されやすい状態にするためには、主要なAIプロバイダーと提携するべきです。そうすることで、AIが主導する情報探索のプロセスの過程で自社の製品・サービスを訴求できるほか、高付加価値な環境での可視性を確保するための機能を共同で開発することが可能になります。
この規模の統合を実現するためには、外部のAIプラットフォームと連携し、消費者側のAIエージェントとのデータ交換を可能にするAPIの開発が不可欠です。同時に、これらのエージェントやプラットフォームとのインタラクションによって増加するデータ要求に対応するため、インフラへの投資も求められます。また、AIプラットフォームごとに異なるデータ要件を理解し、それに対応したデータ戦略も構築しなければなりません。具体的には、製品データのリッチ化、新たなデータセットの生成、リアルタイムデータフィードの実装などを通じて、互換性と最適なパフォーマンスを確保する必要が生じるでしょう。
消費者がAIに購買の意思決定を委ねる傾向が強まる中、製品・サービスをより広範なAIネットワークに組み込むことによって、可視性と関連性を維持することが可能になります。
消費者がAI ツールを利用する主な理由は、価格ではなく利便性です。消費者は常にコストよりも時間を優先するのかという疑問もあるかもしれませんが、この傾向は、設計において利便性を重視する企業にとって、時間に追われる消費者の心を掴む大きなチャンスでもあります。AIを介したあらゆる体験は、企業にとってだけでなく、消費者にとっても迅速かつスムーズであることが不可欠です。
高度な提案機能、即時の製品比較、迅速かつ信頼性の高い決済プロセスを可能にするAIツールは、すでに利便性とスピードを提供する最適な存在となっています。新たなエージェント型の機能が、この傾向をさらに加速させていくと予測されます。
購買プロセスにおける煩雑さを解消するAI機能やAIエージェントを統合することで、AIへの関心の有無やブランドとの接点の有無にかかわらず、時間に追われる消費者の関心を引くことが可能になります。
消費者がこれまでに、重要な手続きにおいてモバイルインターフェースを信頼するようになったのと同様に、AIもまた、使いやすく信頼性の高いデバイスやアプリ、プラットフォームを通じて受け入れられていくでしょう。これを実現するためには、ヘッドレスアーキテクチャを優先してAIを実装し、AIの機能をあらゆる環境で利用可能にした上で、スマートフォン、音声アシスタント、ノートPCなど、消費者にとって身近なデバイスや既存のプラットフォームにシームレスに統合することが求められます。これにより、消費者は自分が使い慣れたチャネルを通じてAIを利用することができ、モバイルインターネットのような多様性を体験することが可能になります。
消費者がこうした信頼できる環境でAIを利用することに慣れていくにつれ、金融取引や旅行の計画といった重要な場面におけるAIの意思決定に対する消費者の満足度も徐々に高まっていくと考えられます。
消費者は、特定の場面でAIの利用を強いられていると感じるよりも、すでに使い慣れたツールやデバイスの延長として、AIアプリケーションをより前向きに受け入れていくでしょう。
AIの利用に慣れている消費者であっても、重要な局面では人間との対話を重視する傾向があります。この傾向は特に、信頼性や責任が問われる医療や金融サービスなどの大きな決断を伴う購入において顕著です。
「一度設定したら終わり」というAI戦略では通用しません。求められる効果的なアプローチは、AIと人とのインタラクションを融合させたハイブリッド型のアプローチです。たとえば、製品情報の収集や初期問い合わせなどにはAIを組み込んだカスタマーエクスペリエンスを設計し、複雑な質問や微妙な判断が必要な場面、あるいは共感や人間的な対応が求められる場面では、スムーズに人間へと引き継ぐことが重要になります。
AIの導入にあたって人による管理と説明責任を重視することで、多様な消費者や状況に応じたカスタマーエクスペリエンスを構築することができます。
世界の約3分の1の人々はいまだにインターネットにアクセスできません。こうした人々や、最新テクノロジーを採用することができない立場に置かれた人々にとって、AIを活用した購入やエージェント型インターネットへの移行は、ハードルが高すぎると感じられるかもしれません。
このような進化は、お気に入りの小売店やエンターテインメント体験においてさえ、消費者が疎外感を覚える要因となり得ます。しかし、さらに深刻になるのは、生活に不可欠なサービスまでもがAIを前提とした仕組みに変わっていく場合です。たとえば、AIが仲介するプラットフォームを通じて提供される行政サービスや、最新のウェアラブル端末を通じてのみ利用できる医療サービスなどは、公平なアクセスの確保を困難にします。
したがって、企業が最も重視すべきことは、先進国市場においても世界市場においても、デジタル格差のさらなる拡大を防ぐことです。
ひとつのアプローチとして、購買プロセスの重要な段階において、AIを使わない選択肢を継続して提供することが考えられます。たとえば、実店舗にインタラクティブばAIツールを導入し、特定の消費者層がAI技術に親しむ機会を提供することも可能でしょう。このような取り組みによって、将来的にAI技術の利用に関する理解や普及が進むまで、すべての消費者に対して公平なアクセスの機会を確保することができます。
巻末注
¹ 満足度指数は、購買プロセスの各段階において、消費者がAIとどの程度積極的に関わろうとしているかを定量化するために、Cognizant Research によって開発された指標です。この指標は、各消費者層に最も当てはまる年代層の分析に基づいています (図1参照)。ただし、「アーリーアダプタ」層だけは、年齢ではなく新しいテクノロジーを最初に利用したいと答えた回答者に限定しています。満足度指数は、Cognizant Researchが実施した調査データおよび定性的な調査結果に基づいて算出されており、「学習」「購入」「利用」の各フェーズにおけるさまざまなAIツールの利用に対する満足度に加え、15の業界にわたる36の製品・サービス・体験についての評価結果が反映されています。
² 回答者には、AIを利用する理由または利用しない理由について、最も当てはまるものを1つだけ選択するよう依頼しました。
Catrinel Bartolomeu
Head of Thought Leadership Editorial
Mary Brandel
Editor