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日本

2020年8月31日

ニューノーマルに向けたデジタルアプローチ (第1回)

新型コロナウイルスのパンデミック状況において保険業界は柔軟に業務モデルを対応させ、従業員の健康と安全を守りながら、ビジネスとサービスを継続させている。新型コロナウイルスのワクチン開発が進められているものの、このウイルスの収束はいまだ不透明な状況である。仮に収束が見えてきたとしても、新型コロナウイルス発生前の元の状況に戻らず、ニューノーマルな時代がやって来ると言われている。そのような中、各保険会社においては保険商品、保険請求・支払、保全等のバリューチェーン全体で、デジタルの持つ強みを継続的に活用していく必要がある。本稿ではWith/Afterコロナにおけるデジタル技術を活用した保険業界の取り組みについて複数回に分けて解説する。

1. 保険商品:カスタマーエクスペリエンスの向上に新たな課題を特定

保険契約者は、多くの保険会社で採用されている、レスポンシブデザインを利用している。PC・スマホ・タブレットから同じwebサイトを閲覧することができる仕組みのことで、大手の保険会社では、保険金の請求受付、保険契約の処理、請求の判定などをデジタル化し、すでに優れた機能を構築している。昨今の新型コロナウイルスによる変化は、カスタマーエクスペリエンスのさらなる向上や事業継続とリスク軽減に必要な機能の洗い出し、解消すべきデータとプロセスのサイロ化問題点の見直しといった、新たな機会につながる課題を保険業界に提示している。

(1) 増加するオンライン加入への対応
チャットボットの導入は、より多くの問い合わせ対応を実現し、顧客への応対品質の維持にも貢献する。また、AIによる顧客の感情分析やAIを利用した会話により、サービス担当者のパフォーマンス向上を図ることも可能だ。

(2) 商品構成と補償内容の見直し
新型コロナウイルスと共存するニューノーマルの生活環境では、テレワークを選択する従業員の増加に伴い、在宅勤務に必要な機器やツールの破損などに備えて、新たな補償内容を必要とする可能性も出てくる。また、中小企業向けのパンデミックおよびウイルス感染の契約除外についても、加筆または修正する必要が出てくる可能性もある。サイバーリスクに関する付加条項、住宅保有者、包括補償内容の拡大を考慮した新規保険商品の開発が必要となるかもしれない。さらに、パンデミックの影響を受け、生命保険商品の引受と保険数理のガイドラインの見直しも予想される。

(3) 保険引受体制の強化
新型コロナウイルスとの共存環境では、これまで保険には必要性を感じていなかった顧客が、治療・療養費や働けなくなった場合の収入補償に備えて新たに保険を検討する可能性が高くなっている。これからの保険業界には、保険料算定時にパンデミックが含まれるといった、新しい需要に応えたものが必要になるだろう。

まとめ:

クラウド導入を推進し、より多くのサービスを迅速に展開することが重要になる。コラボレーションプラットフォームやビデオなど、デジタル技術を活用した顧客対応力の強化、リアルタイムで情報を提供し問題を解決するセルフサービスオプションの充実、引受業務負担の軽減などが挙げられる。例えば、保険契約者またはドローンによって提供された損害の画像をAIにより画像分析し、アジャスターが訪問することなしに自動的に請求処理を完了させる、といったことが考えられる。また、プロセスの合理化とコスト削減を実現するために、RPAを活用してオートメーション化を推進し、事業運営を改善することも必要になるだろう。こうした取り組みにより、予想される収益の減少に備えて、経費を削減することが可能になる。

2. 保険金請求: 急増する応対業務に備える

今後、保険契約者から補償に関する問い合わせが殺到し、対応ができない事態も予想される。現在、事業中断保険や生命保険、障害保険の請求は増加している。短期的には、労働者災害補償保険金の請求が増加することが予想され、損害保険の請求は増加を続ける可能性が高い。当たり前のことだが、新型コロナウイルスによって、台風や大雨による水害、地震、竜巻のような自然災害のリスクが低下するわけではない。パンデミック渦中での保険金請求であっても、最高の顧客満足を実現するリモート機能とオートメーション化の充実を図り、応対業務に備えられるかどうかといった点が大きな鍵になる。

まとめ:

これからの保険会社には、補償範囲の検証をデジタル化し、自動チャットボット、モバイルチャット、拡張ビデオを活用して、サービスの向上を目指すことが求められる。同時に、ソーシャルメディアキャンペーンの展開や、専門チャンネルを介したビデオ解説、YouTube動画などを活用して、保険契約者への情報提供を検討することも必要になるだろう。

自動化、AIによるリモート機能、デジタルエンゲージメントツールなどのデジタルツールを利用した、質の高い体験を確実に顧客に届けることが鍵になる。こうした施策と並行して、コスト削減やサービスレベル向上に取り組みながら、事業継続計画も進めていくことも重要だ。

3. バリューチェーン

(1) 対面販売方法の見直し
保険会社は、新型コロナウイルスの影響に伴い、従来のような伝統的な営業スタイルである対面営業が難しい状況が続いている。2020年4~6月期決算を発表した大手生命保険の新契約年換算保険料を見てみると前年同期に比べて大幅に減っている。コミュニケーションや営業プロセスを強化するクラウドソリューションを活用することで従来どおりの対面販手法を見直し、非対面営業を組み合わせたハイブリットな営業プロセスを確立させ、ニューノーマル時代の課題に対応する。

(2) 業務プロセスの見直しとオートメーション化に関する調査
保険会社にとって理想的な状態は、完全ペーパレス化によるデジタルな業務プロセスの構築である。すでに多くの保険会社は契約変更業務のオンライン化やコールセンターでの対応は行っている。しかし、新契約業務等の紙ベースのワークフロープロセスが残っている。このことが、事業継続への取り組みを阻害する可能性もある。業務プロセスを再設計することにより、紙ベースのハンドオフを無くしていくことが重要である。大容量スキャナーと光学式文字認識(OCR)を使用してデータ抽出を自動化し、デジタルコンテンツに変換し、トランザクションを処理するためにロボット工学を適用するスマートな取り込みソリューションを実現する必要がある。さらに、人手の判断を介する部分に対して、機械学習(ML)を組み込み、洗練された認知技術でRPAを増強する。インテリジェントプロセスオートメーション(IPA)の導入を検討する必要がある。

(3) 主要アプリケーションへの仮想デスクトップ・インフラ接続のためのクラウド導入を加速する
契約、請求書作成、保険金請求をまだクラウド (SaaSまたはPaaS) 処理に踏み切っていない企業は、ハイブリッドクラウドソリューションの導入で、代理店、医師、他の保険会社を含めた広範囲にわたるバリューチェーンの連結関係の強化に目を向けることをお薦めする。

まとめ:

俊敏性と耐久性を向上させる取り組みを継続させ、混乱による被害を軽減するため複数の事業継続計画を用意しておくことが重要になる。

わたしたちが置かれている危機的な状況下にあっても、保険契約者に優れたサービスを提供し続けるためには、保険商品や保険金請求、バリューチェーン全体にわたって既存のデジタル機能を最大限に活用することが必要になる。新型コロナウイルスとの共存時代に求められる新たな需要と機会に備えながら、業務レベルと顧客満足度を維持するために本稿を参照してもらえたら幸いだ。

保険業界が取り組むべき重要事項 第2回

デジタル技術を活用した効果的な取り組み (1)