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アルゴリズムや財務モデルに大きく基づく保険業界にとって、データはこれまでも重要な資産でしたが、現在、データの重要性はかつてないほどに高まっています。保険会社は、データを分析することで自社のビジネスについてより詳細に把握できるようになるため、適切な顧客に焦点を絞り、最適なチャネルを利用して、最適な商品・サービスを最適な順序で提供することが可能になります。また、データは、デジタルネイティブ企業やインシュアテック企業のように、革新的なアイデアやソリューションを提供してカスタマージャーニーの短縮・改善を促すことで急成長を遂げている一連の企業にも機会をもたらしています。

人工知能 (AI) の登場によって、今日では業界全体でデータの重要性が高まっています。AIは、顧客の獲得から保険金請求処理までのバリューチェーン全体に、また顧客、エージェント、従業員を含むすべての利害関係者に、さらなる効率化とイノベーションをもたらします。

しかし、効果的なAIには、高精度で関連性が高い最新のデータが不可欠です。当社の経験から言うと、主要な保険会社では、データの十分な活用までに至っていないのが現状です。データガバナンスとデータ管理に苦慮しているため、AIを活用してより優れた意思決定を行う能力が著しく限られています。レガシーシステム、サイロ化された一貫性に欠けるデータ、そして増え続けるデータ量が障壁となり、データの効率的な管理と活用が困難になっています。下記の図表が示す通り、サードパーティデータのように新しいソースから収集されたデータの重要性が高まるにつれて、新たな課題が生まれており、多くの保険会社はこのような情報を社内に保存されている既存のデータと統合することに苦労しています。

この問題に対処するには、保険会社はデータ管理の取り組みを支えるテクノロジ基盤を根本的に見直す必要があります。そこで当社は、業界大手の顧客企業との業務提携から得た知識と経験を活かして、主要コンセプトと基本原理を作成しました。詳細は、ホワイトペーパー「保険データ基盤を刷新してインテリジェントな意思決定を促進」をご覧ください。

3つの主要コンセプト

保険会社がデータに対する新たなアプローチを構築する上で、以下のコンセプトが有効なフレームワークとなります。

1   レスポンシブなデータアーキテクチャを採用する

データアーキテクチャには、柔軟性に欠けたデータウェアハウスや脆弱なレガシーソースシステムを中心に構築され、ハードウェアに組み込まれた硬直なものが多く存在します。このようなアーキテクチャは、堅牢なデータキュレーションや現代のデータニーズを考慮して設計されたものではありません。そのため、新しい多様なデータを抽出して、インサイトの生成に活用することが難しくなります。これは、デジタル化されたオペレーションにとって致命的と言えるでしょう。次世代のデータアーキテクチャは、データ環境の簡素化、増強、トランスフォーメーションを実現します。その結果、保険会社は、既存のデータをより効率的に活用し、様々なタイプのデータを取り入れて、アプリケーションやビジネスプロセスにデータを適切なフォーマットで迅速に提供することができます。ウェアラブル、ビルディングセンサー、ドローンなどから取り込んだ全く新しいタイプのデータを扱うことは特に困難です。

当社は、様々なソリューションやアクセラレータを開発してきました。その中の1つであるCustomer Journey AI platformは、地方自治体の非構造化データのフィルタリングを行い、営業チームが世帯構成やリスク特性を把握して、保険のアップセル機会を特定できるように支援します。こうしたデータセットの統合をITチームを介さずに実行できるため、通常数週間から数ヶ月かかる工程を省くことができます。

2   インテリジェントなデータ管理を活用する

従来のデータ管理プロセスは、ダイナミックなデータや変化するビジネスニーズに対応できるように設計されていません。メタデータ、データ品質、セキュリティ、コンプライアンス遵守の管理には多大な労力を要するため、データソースやアプリケーションの変化に対応できないことがよくあります。サードパーティのデータを使用すれば、保険会社はデータを3つの層に分けて取り込むという新たな追加の課題に直面します。つまり、未加工データ層、キュレーションデータ層 (インタフェース向上のためにクリーンアップされ整理されたデータ層)、使用データ層 (データにアクセスするためのインタフェースを持つデータ層) の3つです。こうした課題は、多くのプロセス (特に、複数のデータソースへの入力調整のような時間を要する作業) の合理化とオートメーションにより解決できます。

このアプローチにより、データストアを迅速に活用して、実用的な情報やインサイトを提供することができ、変化への対応も可能になります。例えば、ビジネスの状況やデータセットが時間の経過とともに変化しても、当社のLearning Evolutionary Algorithm Framework (学習進化型アルゴリズムフレームワーク)は、最も予測可能な変数や要因の相対的な重要性を動的に特定します。その結果、モデルドリフトの発生を回避し、精度向上のために積極的にモデルを調整することが可能になります。

3   大規模環境での提供を可能にする

データ管理システムの開発・修正プロセスには、アプリケーション開発で利用されるような最新手法が採用されておらず、修正や改善が制限されています。保険会社は、アジャイル、DevOps、DataOps、MLOpsなどの先進的な開発手法を活用することで、プロセスの最適化と簡素化を実現できます。アセットベース開発モデルにより、ソリューションコンポーネントの効率的な再利用と標準化が可能になり、継続的なインテグレーションとデリバリ技術により、新機能をシステムに迅速かつ容易に組み込むことができます。

これらのアプローチにより、新機能の市場投入までの時間が大幅に短縮し、事実上、データ部門は新機能をほぼ継続的にリリースすることができます。例えば、Uberでは毎週数百万件の分析クエリをサポートすることが可能です。

未来に対応するための原則

データへのアプローチを見直す目的やニーズは、企業ごとに異なります。しかし、当社は、AIに対応した適応性の高い新たなデータ基盤を開発するための7つの基本原理を提唱します。

保険会社がデータアーキテクチャに取り組む際に考慮するべき原則:

  • 規模と順応性。オンデマンドで計算を実行でき、IT部門を介さずにデータを利用できるデータアーキテクチャ、クラウド技術を活用して組織が計算能力を調整できるデータアーキテクチャが必要です。
  • あらゆるタイプのデータを取り込む機能の構築。社内データだけではなく、ソーシャルメディア、IoTデバイス、ウェアラブル、ドローンや医療機関の画像・動画などサードパーティのデータを取り込み、インサイトを生成する機能を備えたアーキテクチャが必要です。
  • プロセス開始時からメタデータを重視する。保険会社は、メタデータ (保有するデータに関する情報) を活用することで、より綿密な分析結果や追加コンテクストを得ることができます。しかし、多くの企業では、コンプライアンスを理由に、メタデータの抽出は後回しにされているのが現状です。メタデータは、後から管理するよりも、プロセスの初期段階で管理する方がはるかに簡単です。また、メタデータには、コンプライアンスをはるかに超えた価値があります。例えば、メタデータをカタログ化することで、社内の誰もがアクセスできるデータセット・ライブラリを作成することができます。
  • すべてのデータ層でオープンなアクセスを提供する。前述の通り、プラットフォームには、未加工データ層、キュレーションデータ層、使用データ層の3種のデータ層が存在します。従来のアーキテクチャでは、通常、アクセス権は使用データ層にのみ与えられます。しかし、データサイエンティストは、より多くの情報を生み出す可能性のある要素を見落としていないか確認するために、未加工のデータを調べることが多いため、すべてのデータ層がアクセス可能である必要があります。
  • 自律型のデータ統合を可能にする。アナリティクスとAIアプリケーションに関連データを送り続けるために、新たなデータソースを迅速に統合する必要があります。しかし、対象となる利用環境へのデータマッピングは、依然として手作業で行われていますが、機械学習 (ML) を利用して、受信データの変化を自動的に検出し、統合パターンを調整することで対処できます。機械学習は、APIやAPIゲートウェイを利用したプラグ・アンド・プレイのアーキテクチャをサポートし、代替データソースの拡張に合わせて柔軟性を高めることができます。
  • 正確な特徴量エンジニアリング。特徴量エンジニアリングは、データを機械学習モデルが利用できる形式に変換します。特徴量は、データポイントの記述や学習システムへの入力に使用されるため、可能な限り正確である必要があります。社内で機械学習を広く利用できるようにするには、特徴量エンジニアリングを慎重に行うことが重要です。
  • データの統合セキュリティモデルをサポート。多くの企業が、クラウドベースのサービスとオンプレミスのサービスが混在する複雑なハイブリッド環境に依存しており、無数のユーザーやシステムが様々な場所に、分散したデータを利用しています。統合されたセキュリティアプローチにより、データ生成からデータ使用、データのエンリッチ化サイクルにいたるすべてのポイントで、セキュリティを考慮することができます。

詳細は、ホワイトペーパー「保険データ基盤を刷新してインテリジェントな意思決定を促進」か、当社ウェブサイト内の 保険セクションをご覧ください。または、こちらよりお問い合わせください