保険金請求処理の補強を計画している保険会社の割合は、現在の16%から23年には一気に58%まで跳ね上がるだろう。保険引受およびリスク評価プロセスも現在の9%から23年には49%へと、同様の急増を示す。保険会社は、これら二つのプロセスをほぼゼロタッチにして、コストと処理時間の両方を削減しようと、多大な投資を行っている。この調査に参加した、あるドイツの保険会社のCFOはこう述べている。「ロボティクスとプロセス自動化によりカスタマーサービスが向上し、サービスの提供が増強された。過去15カ月間で、保険金請求処理時間を75%以上削減できた」。
テクノロジーは、シンプルな自動化ツールの域を超えている。AI駆動型ソフトウエアは、保険金請求に記入された構造化されていない、自由に書かれた文章を解釈し、保険契約者や保険金請求査定人が記入したコメントの意味論的意味を推定できるようになった。欧州のある保険会社のCFOは、私たちの調査に次のように答えている。「AIと予測分析は、これ(プロセスの変更)にとって重要な決め手だ。私たちは、非構造化データの問題に対し、テキスト分析とイメージ分類を利用した」。
保険引受と保険金請求処理はどちらも効率化でき、詳しく調査して不正を検知したり、より賢明な判断をしたりすることもできる。その一方で、ミスや偏りにつながりかねない人間の介入を必要最小限に抑えることが可能だ。機械学習とAIソフトウエアは、保険金請求のライフサイクルを劇的に短縮できる。
導入事例―プロセス自動化で顧客満足度を向上
ある米国の大手医療保険会社は、30以上の医療保険プランを運営し、3000万人の加入者を抱えており、1日あたり約10万件の医療保険請求の処理方法など、多くの業務機能のデジタル化を目指していた。
当社は、人手の判断を介する部分に対して、機械学習(ML)を組み込み、洗練された認知技術でRPAを増強するクラウドベースのインテリジェント・プロセス・オートメーション(IPA)を開発・導入し、1000以上のボット(特定処理を自動的に行うタスク)で請求業務担当者の労働力を効果的に増強することで対応した。
請求の大部分は電子的に提出されているが、業務プロセスに合わせて請求を再分類するなど、まだ手作業が必要だった。そこで、請求ワークフローを自動化するためのボットを作成することで、担当者がボットに請求を送信して処理するしくみを構築した。クラウド上のボットのデジタルワークフォースは、週6日、1日20時間稼働し、自己回復特性により、手動で介入することなく高可用性を確保する。継続的インテグレーション/継続的デプロイメント(CI/CD)パイプラインにより、ボットのデプロイメントサイクルが加速される。現在、毎月200万件の請求を処理する能力を有し、そのボリュームに応じてボット処理を調整している。
集中管理されたボットトランザクション管理データベースには、2億件以上のトランザクション記録が保存されている。当社のボット分析ダッシュボードを使用すると、クライアントはリポジトリからトランザクションデータを取得し、処理されたクレーム、ボット使用率などに関するレポートを毎日、毎週提供することができる。これにより、明確な監査証跡を提供し、ボットパフォーマンスの微調整をサポートする。この導入により、効率性の向上、コスト削減に加え規制遵守プロセスの強化や、さらには顧客サービス向上による顧客満足度の向上をもたらした。3000万件の請求処理で1500万ドルの節約になると予想される。さらに、ボットによって処理されたクレームの処理速度が600%向上し、99%の成功率を達成したことで、保険会社のネットプロモータースコア(NPS)は10ベーシスポイント向上した。
(注)コグニザントは、20年6月から8月の間に保険会社のサンプル285人を含む合計4000人の経営幹部およびシニアエグゼクティブを対象とした調査を委託・実施した。質問の約3分の1は、16年に行われた調査と同じものだったため、回答を比較し、テクノロジーや未来の働き方に対する姿勢の変化を追跡することができた。