経営層の圧倒的多数(96%)が、これからの仕事はより戦略的になるだろうと考えている。仕事はさらに専門的になり(94%)、そのために必要なスキルは大きく変わるだろう(93%)。このような変化の典型的な例がコールセンターだ。会話型AIと自然言語処理(NLP)を使って、保険会社は電話の通話内容をリアルタイムで処理するシステムを開発し、感情分析を行って電話をかけてきた人の潜在的感情を読み取ることができる。認知システムによって、チャットボットは顧客対応が可能になり、状況が緊迫して人間による処理が必要になった時には、ベテランの保険外交員に仕事をエスカレーションできる。これが、顧客維持率向上と係員の離職率削減をもたらし、カスタマーエクスペリエンスを一段引き上げるための知見につながる。
成功は、保険会社が社員の力と機械の能力をいかにうまくブレンドし、伸ばしていくかにかかっている。ありきたりで、機械的で、反復的な作業をソフトウエアに任せて、その間、人間は判断や創造力や言語の使用に専念するような、新しいワークフローの作成が必要だ。そうすることで、昔ながらの保険会社は、保険ビジネスを前進させる近代的な企業へとシフトし始めることができる。
スキルの差が連携活動を脅かす
テクノロジーは、現代の仕事では必修科目だ。しかし、このような新しい機能をサポートする従業員がいなければ、保険会社は、仕事を先に進めることができない。 保険会社の回答者によると、将来の従業員に必要なのは、ビッグデータを解析するデータサイエンティスト、これらのデータを実装・可視化・運用するためのデータエンジニア、プロセス自動化のスペシャリスト、セキュリティアナリスト、ブロックチェーンのスペシャリスト、機械学習エンジニアなど、新しいスキルに熟達した人材だ。しかし、こういったスキルは簡単に習得できるものではない。図表1に示したとおり、回答者の半分が23年には厳しい人材不足に見舞われると予測している。そして、深刻な人材不足に陥った企業は、より多くの働き手を惹きつけ、雇用し、積極的に関与させるために、さらに努力する必要がある。 この問題を解決するための主眼となるのが「リスキリング」、つまり、必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させるという概念だ。これは、本社やコールセンターにいる人たちだけではなく、役員室にいる人たちにも言える。
意思決定スキルが最も重要となる
経営層たちは、伸ばすことが最も重要なスキルは意思決定力と分析力であると答えた。これが、人間と機械のチーミングという新しい時代を示唆している。このようなスキルは、データを活用し、大規模な知見をすばやく獲得することの課題とその必要性も反映している。 この課題は、データと格闘する他の業界にとってもなじみ深いものだ。これほどたくさんの情報がある中、最善の決定を最短時間で下すにはどうすればよいか。これほど多数の要因が絡んでいるときに、どうすれば効果的にリスクを計算できるか。倫理と信頼の問題も表面化する。アルゴリズムがこれほど多くの判断を自動的に行っている今、人間の知見と判断力の最適なバランスとはどのようなものか。これらの質問に答えを出すには、保険会社は、人間と機械の間で仕事のバランスをとる必要がある。>>続く