保険業界の羅針盤 - 未来の働き方 -【第1回】保険業界で最も大切な任務はデータを使いこなすこと (2)
具体例―戦略的提携へのダイナミックなシフト
リアルタイムで、柔軟で、顧客の居住地や関心に基づいた保険商品のターゲティングが当たり前になると、リスクの性質とその評価方法が大きく変わる。
顧客は、パーソナライズされたインタラクティブな保険購入方法を求めているため、保険会社はバリューチェーンに沿って、より密接な協力を可能にする必要がある。例えば、医療、生命、財産、損害賠償、金融サービスを網羅した総合保険パッケージを考えてみよう。顧客が転職したり、危険が伴う趣味に手を出したり、新しい車や道具を購入したりするたびに、この総合パッケージは、顧客の新たな現実生活に合わせて、自動的に調整される。これにより、顧客は、保険会社が自分の具体的なニーズや希望を正確に理解してくれていると確信し、安心することができる。
そのためには、保険会社は、(オンラインの不動産マーケットプレイス企業Zillowやe―コマースプラットフォームShopifyのような)他の企業と連携する必要がある。保険会社が顧客リレーションシップを築いていない場合でも、関連性の高い、瞬時のエクスペリエンスで対応する速さが消費者の信頼の礎を築く。昔ながらの保険会社は、スタートアップやインシュアテックと関係を持つことで、顧客の行動に関する新たな知見を提供し、より大きな市場への適合性を得ることができる。データやアルゴリズムによって必要とされた瞬間に柔軟なカバレッジが提供されるので、この総合的なアプローチに対する顧客の期待はますます高まるだろう。
このような方法で、保険会社以外のプレイヤーと相互依存関係を構成してエコシステムを構築することにより、保険会社は、顧客に関するさらに貴重なデータを確実に収集し、商品をより総合的でインタラクティブな価値提案にバンドルできるようになる。 エコシステムに動かされるこの世界で成功を収めるためには、大規模なリスクモデリングを可能にするゼロタッチ処理、異種システム間の相互運用性、意味や機会を求めてデータマイニングできるアルゴリズムを前もって用意しておく必要がある。一例を挙げると、継続的にデータ供給を受けるAI搭載ボットは、まったく休みなく働き、数秒のうちに(またハイパースケールで)、パーソナライズされた保険契約書を提供できる。また、AIにIoTと自動化を組み合わせることで、未来のより正確な予測、保険金請求処理の効率化、不正の検知、よりスマートな保険引受判断を実現し、必要以上に人間を介入させないようにすることができる。これは、数百万の顧客と数十億、数百億のデータポイントを抱える何百もの企業で市場が構成されているときには重要なポイントだ。新たに登場したエコシステムの複雑さとリスクに対応するためには、人びとと、それを支えるマシンの構成や設定を改めざるを得ないだろう。
(注)コグニザントは、20年6月から8月の間に保険会社のサンプル285人を含む合計4000人の経営幹部およびシニアエグゼクティブを対象とした調査を委託・実施した。質問の約3分の1は、16年に行われた調査と同じものだったため、回答を比較し、テクノロジーや未来の働き方に対する姿勢の変化を追跡することができた。