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コグニザントジャパン ブログ

保険業界の羅針盤 - 未来の働き方 -【第1回】保険業界で最も大切な任務はデータを使いこなすこと

新型コロナウイルスの拡大、超少子高齢化、自然災害の増加やデジタル技術の革新により私たちの取り巻く社会環境は大きく変化してきている。このような社会情勢の中、保険会社は、デジタル技術やデジタル志向を取り入れることで、自分たちの仕事が劇的に変化することを期待している、ということが当社の調査で明らかになった。これからの激しいデジタル武装拡張競争で勝利を収めるには、プロセスの高速化、データの活用、新たな協力関係の構築が鍵となる。その調査結果から浮かび上がってきた重要なテーマを中心に、弊社の蓄積された業務知識、デジタルテクノロジーの知見や事例を3回に分けて紹介していく。保険会社の変わりゆく未来の働き方について何らかの気づきを皆さまにお伝えできればと願っている。

リスクが「例外」ではなく「常態化」

コロナ禍以前、保険会社は、中核的な業務プロセスの自動化と高速化、顧客対応チャネルのデジタル化を進めてきた。しかし、年が進むにつれて、あらゆるところにリスクがはびこり、食料品の買い物、友人との会食、通勤など、これまでリスクとは無縁と思われていた場所さえも危なくなってきた。保険会社は、ほぼ一夜にして、パンデミック、気候変動、サイバーリスク、国の安全に対する脅威など、あらゆる未曾有の事態に迅速に対応する機敏さと能力を要求される新しい現実に身を置かざるを得なくなった。

今、保険会社には、処理時間を短縮し、連絡を取りやすくして顧客を力付け、顧客のニーズを予測し、リアルタイムで高度にパーソナライズされた商品が求められている。これにより、消費者は柔軟な商品へのアクセスが可能になり、エンドツーエンドのデジタル体験ができるため、保険加入者とサービス提供者の間の透明性が確保される。また、保険会社自体が、経費を節約し、利益を増やすための知見を得られるような新しい働き方を採用する必要がある。リスクを嫌い、変化を好まないという保険会社固有の性質を脱し、この新しい働き方を受け入れることで、コロナ禍後の経済において保険業界全体で大きな成果を上げることができるはずだ。

成功はデータを使いこなせるかどうかで決まる

当社の調査で、保険会社の回答者に、現在から2023年の間に組織に大きな影響を与えうる力にはどのようなものがあるかを尋ねたところ、回答のトップ3は、ハイパーコネクティビティ(IoT)、自動化、分析となった(図)(注)。特にデータ、スピード、リアルタイムの知見が最も重要であると回答している。これらはいずれも、保険会社が収集するデータを大量に活用し、そこから迅速に知見を得ることの難しさや、デジタルマーケティングの必要性を明確に示している。

 

保険会社は以前から「蓄積したデータ」で、最適な見積額を出すために、家族構成や健康から、ライフスタイル、居住地まで、増加を続ける膨大な情報を貯めこんでいた。しかし、今、保険会社個社の規模を超す量となり、目まぐるしく変化するデータは、明らかに人間が理解できるスケールをはるかに超えている。現状、購入履歴、旅行やライフスタイルのデータ、医療履歴、アウトドア活動のデータ(リアルタイムで収集されたもの)がすべて混ざり合った状態になっている。そして、金融機関や小売業、自動車、レクリエーションなど他の業界と提携することにより、保険会社には、さらに価値のある顧客データがあふれかえる結果となっている。

また、保険会社は、保険料設定と保険引受については、過去の行動パターン分析の枠を超えて最新の行動データを使った予測を行う必要に迫られている。現在、顧客の行動や傾向が生じた瞬間に、その場でターゲットにする柔軟なオンデマンド保険サービスの提供に取り組んでいる。スポーツやレジャー、旅行の限られた期間だけ自分が所持している「モノ」にかけることができるレジャー保険や国内旅行保険、1日自動車保険などは代表的なオンデマンド保険サービスといえる。必要な時に目的に合わせた保障(補償)を、自分が所持しているスマートフォンでいつでもどこでも手軽に契約できる。オンデマンド保険サービスは、ミレニアル世代、Z世代と呼ばれる若年層からタッチポイントを確保し、この保険体験をきっかけとして保険商品に興味を持ってもらうことが期待できるはずだ。

保険会社が、人間の介入を最小限に抑え、高い精度を保ちながら、どのくらい効率的かつすばやくリスクに対する保険料設定を行い、保険を引き受けられるかによって、競合他社に勝てるかどうかが決まる。このことは、一部の限られた組織ではなく会社全体でデータを使いこなすことを意味するとともに、組織を上から下まで見直すという意味でもある。例えば、業務パートナーとシームレスにつながる保険業務システムのAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を公開し、業務パートナーのシステムと外部連携できるようにする、市場を把握する先進の分析プラットフォームを導入する、リスクに対する保険料を定め大規模な不正を検知する高度な機械学習アルゴリズムを設計する、ということだ。>>続く



この記事の投稿者

小穴隆三

コグニザントジャパン株式会社
コンサルティング事業部

コグニザントジャパン株式会社コンサルティング事業部 小穴隆三

コグニザントジャパン株式会社コンサルティング事業部に所属し生損保業界を担当。



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