メインコンテンツにスキップ Skip to footer
コグニザントジャパン ブログ

保険業界の羅針盤 - 未来の働き方 - エージェント型AIを通して保険金請求処理をどう刷新するか

多くの保険会社では、請求処理の平均所要時間は、事案の複雑さ、滞留件数、さらに近年では誰が(あるいは何が)処理しているかといった要素に左右される。標準的なタイムラインでは数日や数週間かかる場合もあるが、米インシュアテック企業・レモネード社が提供するAI JimのようなAI搭載システムで顧客の事案が管理されている場合、正当な保険金請求はわずか数秒で処理が可能となる。長年にわたり、自動化やAI Jimのような従来型AIツールは、書類検証、保険適格性チェック、不正請求審査といった定型業務に対応するなど、請求処理において特徴的な役割を果たしてきた。この「定型業務」という点が鍵となる。残念ながら、通常のプロセスに問題(書類の不備、氏名の不一致、請求の誤分類・誤送付等)が生じた場合、遅延は秒単位ではなく、数日、あるいは数週間に及ぶことがある。これは、AI システムが対処できない問題を人間のエージェントが介入して解決する必要があるからだ。しかしエージェント型AIは、保険金請求処理における例外処理を自律的に処理できるため、これまで単純な請求処理でしか実現できなかったスピードと確度での複雑な事案への対処も可能にする。

エージェント型AIによる自動請求処理の強化

従来の自動化と比較した場合、エージェント型AIにおける最大の差別化要因は、「継続的な学習」と「そのインテリジェンスを活用した意思決定」にある。実際には、これはエージェント型AIが保険金請求プロセスにおいて論理的思考、推論、判断を必要とする多くの日常的な例外処理を自動化できることを意味する。書類の審査を例に考えてみよう。大半の医療保険請求では、保険契約者が請求内容を裏付ける書類(領収書、医師の診断書や紹介状など)を提出する必要がある。従来型AIは、事前定義されたルールや特定のパラメータに基づき、それらの書類の収集・確認を自動化する目的で利用されてきた。

しかし、提出された書類がAIツールの知能の範疇(はんちゅう)を超える場合、このプロセスの遅延・中断が頻発する。これには、ファイルの不備、サポートされていない形式での保存、あるいはそもそもファイルが不要である場合など、さまざまなケースが考えられる。このような場合、人間が介入してエラーを確認、解決策を判断して次善策を講じる必要がある。

多くの保険会社にとって、ここでの真の損失は個々の事案の処理が遅れることだけでなく、人間のエージェントが数多くの異なる事案に共通する例外を常に確認・解決する必要が生じる点にある。自己学習が可能で適応性に優れたエージェント型AIシステムを活用することで、こうした必要性を軽減・排除することが可能となる。ニュアンスの把握が限定的で状況認識能力も低い従来のAIシステムとは異なり、エージェント型AI は、より広範なプロセスの中でタスクを文脈化できる。過去の学習に基づいてパターンを認識し、一般的なエラーを承認済みの解決策とひも付けることが可能だ。

例えば、医療保険会社の書類確認ツールが、紹介状の不備を指摘したとする。エージェント型ソリューションでは、人間と同様にこの状況に対応し、一連の質問を投げかけて次善策を見出すことが可能となる(図1)。

図1

保険請求処理におけるエージェント型AI活用のさらなる五つのユースケース

ここでは、エージェントAIが持つ適応学習能力とインテリジェントな意思決定能力を保険金請求処理ライフサイクルにどう適用できるか、さらに五つの手法について考察する。

  1. データ入力:エージェント型AIは、構造化データと非構造化データ共に処理が可能だ。顧客からのメール、チャットボットの記録、報告書、医療提供者・技術者・規制当局による手書きメモなど、多様なソースから情報を抽出できる。また、情報を文脈化して意味を推論できるため、より正確かつ包括的に事案を把握でき、後続手続きにおける請求処理の進め方について確かな基盤を構築する。
  2. 保険金請求のトリアージ: エージェント型システムは、請求の意図や期待されるビジネス成果についての理解も可能だ。そのため、各事案固有の状況に基づき、人によるレビュー対象のフラグ付け、顧客への事前連絡による追加情報の収集、あるいは不正請求審査の依頼など、最適な次善措置を自律的に講じることが可能となる。
  3. 書類確認:エージェント型AIソリューションは、チャットボットを制御する静的ルールだけにとどまらず、現実の事案から継続的に学習する。例えば、自動車保険の請求を行う場合、保険契約者は通常、写真、修理見積、警察の事故報告書などを提出する必要がある。では、写真ではなく動画が提出された場合はどうか。こうしたファイルが含まれると、従来のAIツールは機能しなくなるだろう。しかしエージェント型AIでは、こうした追加ファイルを認識・分析・適用する方法を一度学習すると、その例外処理を通じて新たな道筋を導き出す。
  4. カスタマーサポート: エージェント型AIは顧客の意図、口調、感情をリアルタイムで解釈し、より適応的かつインテリジェントな対話を実現する。例えば、保険金請求の遅延や拒否の懸念により顧客がいら立ちを感じている場合、AIツールは状況を評価し、人間のエージェントに問題をエスカレーションする、あるいは更新されたタイムラインを顧客に提示するといった事前的な措置を講じることができる。
  5. 不正検知: 予測分析やパターン認識を活用し、エージェント型AIは請求データにおける不審な点を事前に特定することが可能だ。法的記録や過去の請求を分析することで、不正の可能性のある請求を特定し、追加調査を促す。例えば、エージェント型AIシステムは、医療提供者が同一日時に行われた複数の処置に対して複数の償還請求を提出しているパターンを検出するかもしれない。これは、その処置の一部または全てが不正である可能性を示唆している。
図2


この記事の投稿者

コグニザントジャパン株式会社

保険事業部

Author Image



ニュースリリース
ニュースリリース

最新ニュース、イベント情報、掲載記事

In focus image


最新記事

保険金請求処理におけるエージェント型AI適用のベストプラクティス

エージェント型AIは、保険金請求処理の迅速化、正確性向上、規模拡大、コンプライアンス強化において重要な役割を果たすと考えられている。エージェント型AIを効果的に活用し、その投資を最大限に生かすための三つの提案事項を以下に紹介する。

  1. 導入に先立ち、高品質な現実世界の訓練データに投資:エージェント型システムの性能や意思決定精度は、訓練に用いられたデータ品質に依存する。単純化された、あるいは非現実的なデータセットでモデルを訓練すると、誤った出力、顧客満足度の低下、人的な手直しの発生につながる可能性がある。保険金請求処理におけるエージェント型AIの価値を最大限に実現するには、現実世界の複雑さを反映した高品質な訓練データへの投資が不可欠である。
  2. 初期段階からデータ保護、規制順守、監査可能性を考慮して設計:信頼性・拡張性の高い導入を実現するには、実装プロセスの初期段階からコンプライアンス要件、ガバナンスフレームワークにまで対処する必要がある。具体的には以下の手順となる。
    ▽機密情報にアクセスすることなく動作するAIシステムを設計
    ▽訓練データから保護対象健康情報や個人識別情報を除外
    ▽訓練データやモデル出力に対する定期的な監査を実施し、機密性の高い情報が使用されていないことを確認
  3. 人的な介入が必要となるタイミングを認識できるようAIシステムを訓練:エージェント型AIは業務を通じて学習し、インテリジェントな判断を下すことは可能かもしれない。しかしながら、文脈や監視の欠如によって誤った判断を下し得る権限を与えることは避けなければならない。公平性と正確性を担保できるよう、AIは訓練時に複雑な現実世界のシナリオに触れておく必要がある。これにより、システムはいつ、どのように適切な判断を下すべきかを学習し、人的判断を必要とする複雑な事案を特定できるようになる。
関連記事