新たな価値観、
新たなマーケターの在り方
概要
消費者が日常生活にAIを取り入れるようになるにつれ、ブランドと消費者とのつながり方そのものが変わりつつあります。これは遠い未来の話ではなく、すでに今まさに起きていることです。そしてこの変化は、CMOが先頭に立って組織を牽引する絶好の機会でもあります。
本レポートでは、消費者によるAIの活用に対しマーケティングリーダーが追いついてないという現状に焦点を当てています。私たちのレポート「新たな価値観、新たな市場」から得たインサイトに基づくこの調査では、AIフレンドリーな消費者が、米国・英国・ドイツ・オーストラリアの4カ国だけでも、2030年までに6.3兆ドル規模の消費を牽引すると予測されています。しかし、多くのCMOは依然として、この変革の本質をどう捉え、備えるべきか苦心し、次のアクションに移れていない状態です。本レポートは、カスタマージャーニーの各フェーズ (発見から購入後まで) でAIがどう利用されているか、その複雑な状況を分析し、企業が消費者のAI活用に追いついていない実態を明らかにします。
では、どうすれば消費者に追いつくことができるのでしょうか?マーケティングの設計者として、このAIが介在する世界を生き抜くだけでなく、勝ち抜くにはどうすればよいのでしょうか?本レポートでは、マーケティング機能を受動的な対応型から、積極的なリーダーシップ型へと変えるための実践的な指針を提示しています。いま求められているのは、CMOがその職務の拡大を受け入れ、アルゴリズムを理解するだけでなく、AI時代においてブランドの成功の鍵を握るのは「人間との持続的なつながり」であるという明確なビジョンを掲げることです。
THEA HAYDEN,
CHIEF MARKETING OFFICER AT COGNIZANT
今、私たちは、AIがプロセスを効率化するだけでなく、消費者の生活・働き方・購買行動そのものを根本から変えつつある、重大な瞬間に立ち会っています。私たちの最新の調査によると、AIの活用に積極的な消費者は、2030年までに最大で消費支出の55%を牽引すると予想されています。これは単なるテクノロジーのアップグレードではなく、市場そのものの再構築を意味し、この変化の本質を理解することは、すべてのCEOにとって極めて重要な課題となっています。
本調査は、複数のグローバル市場を対象に実施されたもので、この変化を読み解くうえで重要な視点を示しています。特に、消費者の間で急速にAI利用が進んでいる現実と、企業側の、特にマーケティング部門における現在の準備状況との間に広がるギャップに焦点を当てています。消費者はすでに、日常業務から購買判断にいたるまで幅広くAIを利用し始めています。しかし、私たちの調査結果は、この新たな現実に対し、企業の多くはまだ対応し切れていないことを示しています。私たちは、AIに見つけてもらうための最適化、人間の関与を最小限に抑えた意思決定、そして戦略的成長への重大な影響まで、市場が直面する3つの変革の波を段階的に検証します。
今、CEOに求められているのは、単に理解することではなく、意思を持って行動することです。AIを単なるコスト削減のためのツールではなく、顧客関係を強化するための原動力と捉えるリーダーこそが、これからの時代の勝者となるでしょう。本レポートは、AIを単にテクノロジースタックに組み込むのではなく、カスタマーエクスペリエンスとブランド戦略の中核へと統合していくためのロードマップを提示します。AIが常に介在する激変の時代において、自社ブランドの強みや差別化要素を維持し、顧客とつながり続けるための指南書としてご一読ください。
BENJAMIN WIENER,
GLOBAL HEAD OF COGNIZANT MOMENT
最新の調査では、消費者によるAIの活用状況と、CMO (最高マーケティング責任者) 側の準備状況との間にギャップがあることが明らかになりました。本調査は、消費者の視点を分析した独自レポート「新たな価値観、新たな市場」の調査結果を踏まえて、マーケター側の実態に焦点を当てています。
2025年第2四半期、私たちは北米、英国、ヨーロッパ、中東、アフリカ、およびアジア太平洋地域のシニアマーケティング責任者への定性インタビューを実施しました。金融サービス、通信、メディア&エンターテインメント、外食、消費財、製薬など、幅広い業界を代表するマーケティングリーダーたちです。
本調査から明らかになったのは、消費者によるAIの利用が加速する一方で、多くのマーケティングリーダーはAIを本格的に利用するには至っておらず、限定的な場面で試験的に利用しているにすぎないということです。
「新たな価値観、新たなマーケターの在り方」では、消費者と企業の間に広がる準備状況の差をどのように埋めるべきかについての提言を含め、調査結果の概要をご紹介します。
「パーソナルAIアシスタントが広く普及する中、CMOは、カスタマーエクスペリエンス (CX) 全体を再構築する絶好の機会を手にしています。」
BENJAMIN WIENER,
GLOBAL HEAD OF COGNIZANT MOMENT
消費者に最も近い立場にいるマーケティング責任者は、組織変革の担い手となりうる存在です。市場動向を見極め、迅速に対応する姿勢は、AIによる変革の時代を乗り切る上で不可欠な資質と言えるでしょう。
誰もが、似たようなデータセットでトレーニングされたAIを使う時代においては、マーケティングコンテンツが均一化されます。その結果、オリジナリティや創造性が薄れ、ブランド同士の差が見えづらくなります。そこで問われるのは、自社ブランドをどう差別化し、どう印象づけるのかということです。
2030年のCMOには、現在とは異なる進化したスキルセットが求められるでしょう。テクノロジーへの理解、データリテラシー、そしてAI倫理ガバナンスといった能力が、これまでのマーケティング知識と同様に重要となります。
画像、コピー、クリエイティブ素材など、マーケティングチームが作成するコンテンツを、生成AIが直接手がけるようになった今、CMOはこのテクノロジーを率先して活用すべき立場にあります。マーケティング責任者は、社内の先導役として、AIエージェントや生成AIの普及を担うことになるでしょう。
「CMOが主役となる時代が到来しました。肩書きは変わっていくかもしれませんが、私たちの使命はかつでないほど明確です。それは、AIが常に介在する世界で、ブランド体験を構築する設計者となることです。」
THEA HAYDEN,
CHIEF MARKETING OFFICER AT COGNIZANT
CMOのジェイコブの一日は、各市場ごとに直近の消費者感情のトレンドを分析したAI生成レポートの確認から始まります。彼のマーケティングツールはすでに、キャンペーンパラメーターを自動的に調整しており、日常的な判断においては人手を介さずにパフォーマンスを最適化しています。
コンテンツカレンダーの管理やSNS投稿の承認に追われるのではなく、ジェイコブは、自社ブランドによる最新の没入型体験に注力しています。彼のクリエイティブチームは、話題のエンターテインメント作品とのコラボレーションにおいて、ブランドの一貫性を維持しながらも、新たな領域に踏み込む斬新なコンセプトを、生成AIを活用して生み出しています。
「AIが出発点を示してくれたのはたしかです。でも、そこに感情の喚起や文化的なニュアンスを加えるのは私たち人間の仕事です。そういった点は、AIにはまだ難しいですね」と、彼のクリエイティブディレクターは語っています。
その後、ジェイコブはAI倫理委員会と面会し、エージェントとのパートナーシップ戦略を検討します。AIを介しての消費者購入が増える中、彼の会社の製品が市場の中で見つかりやすく、競争力を維持できるようにしておく必要があるからです。
「私たちのブランドコンセプトは、創造性と自己表現だ」と、ジェイコブはチームに改めて確認します。「ユーザーが自分のAIエージェントを通じて私たちのブランドに出会ったときにも、その価値提案が明確に伝わるようにしておかなければならない。」
ジェイコブの役割は、キャンペーンマネージャーからカスタマーエクスペリエンスの設計者へと進化を遂げています。もはや彼の仕事は、単なる製品のマーケティングにとどまらず、AIが介在する世界において、製品そのものがブランドメッセージを体現するようにすることです。彼のチームは以前より小規模ながらも、より戦略的な役割を担っています。実行業務ではなくクリエイティブな業務がメインになり、かつてチームの7割の時間を費やしていたオペレーション業務は、今ではAIに任せています。
午前6時15分。サラは、AIアシスタントにやさしく起こされます。AIアシスタントは彼女の睡眠パターンを分析し、最適な起床時間を判断していたのです。「おはようございます」とAIが声をかけます。「昨夜の睡眠スコアは58%でした。睡眠データによると、マットレスに劣化の兆候が見られます。お好みや健康状態をもとに調べたところ、おすすめできる快適なベッドが3つあります。」
サラは壁面ディスプレイに映された提案を見ながら、素材やサステナビリティについて質問します。AIはすでに、彼女の会員ランクやステータスを考慮し、彼女の好みのショップと最良の価格を交渉済みです。「天然繊維のやつがいいわね。注文して」と彼女が言うと、AIは彼女の在宅勤務予定日を確認し、金曜午後の配送を手配します。
その後、彼女のAIは、古いマットレスのリサイクルを手配し、自宅の在庫リストを更新し、保証登録も自動で完了させます。新しいマットレスが届く頃には、すでに自宅のホームシステムと同期済みです。その夜、サラはぐっすりと眠り、AIは新しいマットレスの熱特性に合わせて寝室の温度と照明を最適に調整するためのデータを記録します。
検索エンジンも、商品の比較も、フォームの入力もありません。あるのは、状況の理解、個人に合わせた提案、そしてスムーズなタスク処理だけです。
AIを使いこなす消費者が牽引する消費支出の割合
AIの導入において、利便性を重視すると回答した人の割合
「これはマーケティングが企業の中心となっていくことを意味します。従来のようにマーケティングだけを切り離して考えることはできません。これからは、企業のあらゆる機能が連動し、ビジネス全体を動かしていくようになるでしょう。マーケティングを全社レベルで推進することができるCMOこそが、業績と売上に最も貢献する存在になるのです。」
IAN BARLOW,
GLOBAL HEAD OF MARKETING AND ADVERTISING SERVICES AT COGNIZANT MOMENT
コグニザントによる「新たな価値観、新たな市場」では、2030年までにAIフレンドリーな消費者が消費支出の最大55%を牽引すると予想されています。これは、米国では4.4兆ドル、英国では6,900億ポンドに相当します。こうした変化は、消費者が製品やサービスを見つけ、購入し、利用するという一連のサイクルが根本的に変わることを意味しています。
本調査の結果から、カスタマージャーニーの各フェーズにおいて、AIに対する消費者の満足度にはばらつきがあることが明らかになりました。
私たちの新たな調査では、マーケティングリーダーが変化のスピードに圧倒されている実態が明らかになりました。急変する状況についていくことの難しさが表れています。業界を問わず、AI環境の急激な変化を乗り切ろうとするCMOが呆然と立ち尽くしている姿が浮き上がります。
市場変化の3つの潮流
(2025年-2030年)
第1の波: 2025年 — 2027年:
AI検索への最適化を企業が推進
第2の波: 2027年 — 2029年:
AI機能が製品やインフラに組み込まれる
第3の波: 2030年以降:
意思決定における人の関与が最小限になる完全な変革の完了
本調査では、CMOたちの関心が、「市場変化の第1の波」である発見フェーズに集中していることが明らかになりました。彼らは、消費者が生成AIを活用する機会が増えていることは認識しているものの、それをカスタマージャーニーの根本的な変化とは捉えず、あくまで既存のマーケティングチャネルに新たなチャネルが一つ増えただけに過ぎないと考えているようです。
製薬業界および金融サービス業界では、マーケティングにおけるAIの導入が他業界に比べて遅れています。一方、メディア、エンターテインメント、日用消費財 (FMCG) といった業界では、より高度なAI活用が進んでいます。こうした業界による傾向の違いは、それぞれの規制環境、リスク許容度、消費者の期待度を反映したものです。
通信企業幹部
「購入」フェーズは、AIに対する消費者の満足度が最も低い段階です。これは、購買の意思決定をAIに委ねることへの消費者の懸念を反映しています。特に、第三者によって提供されるエージェント型AIについては、カスタマーエクスペリエンスを担当する多くの責任者が、まだ時期尚早と感じており、具体的な計画には踏み切れていないのが現状です。
「利用」フェーズでは、AIに対する消費者の満足度が高まります。これは、カスタマーサービス、製品の最適化、およびメンテナンスにおけるAIの役割が、利用者にとって価値あるものとして認識され始めていることを示しています。カスタマーエクスペリエンスの責任者も、チャットボットが消費者にとってストレスの原因になりがちであることを認めており、AIによってその体験が大きく改善される可能性があると考えています。
インタビューにより、マーケティングリーダーが今後取り組むべき3つの領域が明らかになりました。
「未来がどうなるかは分かりませんが、チャンスは広がっています。私たちは適応しなければなりませんし、きっと適応できると思います。」
製造企業幹部
AIの進化に対応し、新しいカスタマージャーニーの中でブランドの存在感をどのように築いていくかを学んでいく必要があります。と同時にCXリーダーたちは、基本的な原則は変わらないとも考えています。つまり、感情的なつながり、差別化、魅力的な価値提案、そして優れたカスタマーエクスペリエンスは今後も重要だということです。さらに、消費者がどのように製品を見つけ、購入するかに関わらず、実際の製品体験が変わることはありません。
AIにより、ブランドと顧客の基本的な関係構築が難しくなる可能性があります。ある金融サービス企業の幹部は次のように警鐘を鳴らしています。 「企業は、差別化を図り、関係を構築するために、一層の努力が必要になるでしょう。これからの消費者は、最初に購入する時点で、すでに多くの情報を得ているからです。」
AIエージェントがブランドと消費者をつなぐ存在となることで、この課題はさらに深刻化します。従来の検索エンジンやSNSとは異なり、AIエージェントは複数の情報源から得た情報を統合し、「おすすめ」を提示します。そのため、ブランドメッセージのコントロールが難しくなることに、CX (顧客体験) のリーダーたちは強い懸念を抱いています。
つまりCMOは、製品品質からカスタマーサービス、オンラインでの存在感にいたるまで、あらゆるタッチポイントにおける自社ブランドの優位性を確保しなければなりません。
AI時代においてブランドと消費者との関係をどう維持するべきか、その具体策をすでに打ち出している先進的な企業もあります。信頼の構築、価値の提供、差別化の実現に向けた実践的なアプローチについて、実例を挙げて説明します。
あるFMCG企業は、顧客接点を従来の単純なチャットボットから、インテリジェントなアドバイザーへと進化させました。「背景を理解した対応が可能になり、信頼のあるアドバイスが可能になりました」と、同社の幹部は語ります。「こうしたチャットの内容は、個人情報を取り除いたうえで分析され、フィードバックや苦情、提案としてキーパーソンに伝えられ、活用されています。」
あるメディア・エンターテインメント企業の幹部は、統合された体験のビジョンについて次のように語っています。「顧客には、その場その場の状況にあったコミュニケーションを継続的にご提供できるようになるでしょう。プラットフォームは、顧客の状況や背景、過去の購買履歴を理解しており、状況に応じて臨機応変な対応ができるようになっています。」
「私が番組を見ているとしましょう。次に表示されるおすすめは、スマートウォッチが計測した私の体のコンディションや、私が誰と一緒に部屋にいるかによって変わります。決して、視聴履歴だけを参考にするわけではありません。」
複数の経営幹部が、AIの利用についての透明性がブランドの差別化要因になると強調しています。「よいアドバイスをご提供できればユーザーの利用率は急増する」と、ある金融サービス企業の幹部は述べています。「AIを利用していることを明確に伝え、その利点を説明すること。透明性を保てば、消費者から好意的に受け入れられるのです。」
最終的に、AI時代に最も成功するブランドとは、人とのつながりの代わりにテクノロジーを活用するのではなく、人とのつながりを深める手段としてテクノロジーを活用する企業です。利便性を提供しつつ、長期的なロイヤルティにつながる感情的な絆を維持することが重要です。
CXリーダーたちは、パーソナライゼーションとプライバシーの両立の難しさを痛感しています。リーダーの中には、主にテック企業によるデータ利用、特に健康データや財務データの不適切な利用に対して、消費者の間に不信感があることを指摘する人もいます。また、どのようなデータが収集され、それが消費者にどのようなメリットをもたらすのか、透明性のある明確な説明が不可欠であると強調する人もいます。
責任あるAIの目的は、コンプライアンスの遵守だけではありません。それは、人々が、自分の選択、自分の情報、自分の尊厳を自分で守れるようにすることです。「倫理的デザインは、信頼の下地であり上塗りではありません。ブランドの価値、インクルージョン、レジリエンスの土台そのものです。」- Amir Banifatemi, Chief Responsible AI Officer, Cognizant.
メディア& エンタテインメント企業幹部
社会から疎外された消費者やテクノロジーを利用しきれない消費者にとって、AIを介しての購買は障壁となり得ます。特に、生活に不可欠な行政サービスや医療サービスがAIの利用を前提とする中で、その影響は無視できません。企業には、AIが広く普及するまでの間、AIに代わる手段の提供や、実店舗などへのAIの導入を通じて、公平なアクセスを確保する取り組みが求められます。
信頼を構築していくためには、単なる情報開示にとどまらず、消費者がAIとのやりとりを自らコントロールできる環境を提供することが不可欠です。ある金融サービス企業の幹部はこう述べています。「AIをもっと利用していくことになるのは間違いありません。重要なのは、消費者がAIをどれだけ人間らしく感じられるかどうかです。鍵になるのは信頼関係でしょう。たとえば、チャットボットは、消費者の問いかけに対してより正確な応答をするようになりました。その結果、自然な対話が生まれ、より個人的なやりとりが可能になるのです。」
重要なのは、対応を自動化する一方で、人間にも選択の余地を残すよう配慮することです。消費者がAI主導のマーケティング体験を通じて、操作されていると感じるのではなく、自らの意思で選択していると感じられるようにすることが求められます。
AIドリブンな消費者が牽引する新時代で成長を持続させるためには、戦略、テクノロジー、人材、プロセス、オペレーション、そして倫理という6つの重要分野において、事業運営のあり方を再考する必要があります。
あらゆるフェーズでマーケティングを展開するべきです。「学習」フェーズから始まり、次に「利用」フェーズを通じてロイヤルティを築き、そして「購入」フェーズへと消費者とのタッチポイントはつながっていきます。マーケティングリーダーとしては、まず消費者の満足度が一番高い「発見」フェーズにAI投資の重点を置くべきです。その後、「利用」フェーズで価値を実感させ、信頼を深めたうえで、AIを介した購買につなげることが重要です。忘れてはならないのは、もはや人に製品を売るだけがマーケティングではないということです。人との感情的なつながりを保ちながら、AIに発見されやすい形で製品を設計することが求められているのです。
AIと人間らしさを両立させるための戦略が重要です。AIドリブンな体験において、特に複雑な質問や感情を伴う場面では、人間の関与が欠かせません。消費者が、自分は今AIとやり取りしているということを理解でき、必要に応じて人間によるサポートを選ぶこともできるような、透明性の高いAI体験が求められます。また、消費者がAIを選ぶ理由は効率であり、必ずしも価格的なメリットではありません。コスト削減よりも、利便性や時短効果の向上を重視するべきです。
エージェント型のカスタマージャーニーに対応するために、社内ワークフローの再設計を進めましょう。AIエージェントが各タッチポイントでどのように自社ブランドと関わるのかを把握し、AIとの対話を通して常に一貫したメッセージを送れるように設計する必要があります。また、マシンが読み取れるようなコンテンツを自社らしい表現で作成し、外部のAIエージェントにも認識されやすい仕組みを構築することや、消費者がAIを介して自社ブランドとどのように関わっているのかを把握するために、フィードバックループを構築することも重要になります。
AI時代に向けて、マーケティング人材の再教育が求められています。これからのマーケティングチームには、従来のスキルに加えて、AIプロンプト設計、データリテラシー、AI倫理ガバナンスといった新たな能力が必要です。人材の入れ替えではなく、スキルの底上げに焦点を当てることが重要です。AIを活用すれば、クリエイターはより戦略的な業務や、感情表現・文化的ニュアンスといった、人間の感性が求められる仕事に集中できるようになります。また、マーケティングが組織全体のAI活用を牽引するケースが増えており、部門を超えたコラボレーション力の向上も重要なテーマとなっています。
AI時代を迎え、マーケティングツールの監査と最適化が急務です。社内ツールの見直しにとどまらず、AIが自社ブランドをいかに魅力的に「おすすめ」してくれるかどうかが、今後の重要課題となります。そのためには、ブランドの訴求内容、メタデータを見直し、マシンに認識されやすい形に整備することが不可欠です。また、分類体系の標準化や、SEOキーワードに加えて、AIシステムが理解できる属性や専門知識を使ったタグ付けも必要です。また、マーケティング資産がAIに対応しているかどうかを監査する専任チームを設け、量よりも構造を優先することが求められます。
責任あるAIは、競争優位を確立するための重要な要素です。AIの利用やデータ収集の透明性を高めるが、信頼の構築につながります。AI導入にあたっては、社会的に疎外された人々や、テクノロジーの利用が限られる消費者を排除しないことが重要です。また、データの提供に対する対価を明示し、AIとの対話・交流における主導権を消費者側が保てるように配慮する必要があります。AI倫理の実践を、単なるコンプライアンス対応ではなく、自社ブランドの差別化要素として打ち出す姿勢が問われています。
AIによって競争優位を築くためのチャンスは、急速に限られつつあります。機会を先取りした企業は、競争のルールを確立し、より高度なAI機能を構築し、AIフレンドリーな消費者層を他社に先駆けて取り込むことになるでしょう。
しかし、早く始めるだけでは不十分です。重要になるのは戦略です。倫理、インクルージョン、そして真の価値創出に重きを置いてAI変革に取り組むCMOこそが、揺るがない競争優位を築くことができます。
CMOは、組織の未来を形作る特別な立場にあります。AIフレンドリーな消費者層が経済力を強める中、マーケティング責任者は、最前線で変革をリードすることになります。CMOがAIを活用した顧客体験の設計者という新たな役割を受け入れる企業が、今後成長を遂げていくでしょう。
CMOが主役となる時代が到来したのです。