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ワクチンの試験と製造から治療へのアクセスや治療の提供まで、ライフサイエンス業界はあらゆる面において、パンデミックにより、迅速かつ大規模な形での順応を余儀なくされました。臨床開発、製造、サプライチェーンなどの最重要ビジネスプロセスが、パンデミックならではの課題や財務面での実情に適合して進化する必要がありました。しかし、パンデミックで市場の変動性が一気に高まった中でも、ライフサイエンス企業は急速な変化にうまく対応しています。パンデミックに呼応する形で、国の規制状況はかつてないほどの柔軟性を見せました。また、絶え間のない科学的な発見の連続により、将来確実だった臨床の道筋が一夜にして行き詰まってしまう可能性もあります。変化への対応は、この業界の構造に元々組み込まれているのです。

しかもライフサイエンス分野では、ビジネス課題解決のための先進技術を取り入れることは何ら目新しいことではありません。人工知能(AI)を活用した何年にもわたるメッセンジャーRNA研究こそが、ここまで迅速な新型コロナウイルスのワクチン製造を可能にしました。そして、先端データ戦略の継続的な実践によって各企業は、最新の特効薬であれ次世代のMRI装置であれ、こうした新製品の市場投入時間を短縮するとともに、旧製品や従前の科学調査分野の転用を実現しています。

しかし核となる部分では、コグニザントが支援したEconomist Impactの調査が示すとおり、ライフサイエンスはいまだ改善機会が多数存在する業界です。すばやい動きは、製品開発など一部の分野には恩恵をもたらしますが、社内全体に企業戦略を浸透させるといった他の面にとっては阻害要因です。実際、組織としての整合性、そして最上位戦略を浸透させる必要性は、ライフサイエンス分野における最重要課題となっています。どちらも、迅速に展開し、変化に対応する中での実行は困難です。

技術のインテリジェントな実装によるデータ優位性の維持

回答者には、企業としてすでに採用している、または採用を予定している技術や手法を尋ねました(各技術について、すでに採用している、または採用を予定していると答えた回答者の割合)。

回答者:ライフサイエンス企業の上級幹部250名

出典:Economist Impact Survey 2022

図1

 

特に優れている点

  • データ優位性。ライフサイエンスは、データ管理の成熟度において突出しています。競争優位に向けたデータ資産の活用が、この業界のビジネスモデルに深く染み込んでいるのです。具体的には、医療機器に分析機能を付加する、患者体験改善のために患者データを活用する、新薬発見の強化や成果改善のためにアルゴリズムにデータを注入する、などです。
  • 技術戦略。 ライフサイエンス業界は、新興の最先端技術を活用してビジネスプロセスを増強する強固な技術戦略を誇ります。経営幹部の購入リスト上位に並ぶのは、モノのインターネット(IoT)が80%、そのほか、ビッグデータ分析(78%)、5G(72%)、AI(64%)などです。業界の下位分野の企業は、他よりも特定の技術区分に傾注しています。たとえば、端末製造事業者が5GとIoTの接続性の課題に目を向けている一方、バイオ医薬品企業は、細胞および遺伝子治療の商用化に役立つ、スマートな製造業務を促進するためのツールを活用しています。

長期的な課題

  • やっかいなデータの制御。技術が整備されたこの状況においても、データはいまだ人知の範囲外です。人体を構成する無数の仕組み(循環、呼吸など)やマイクロバイオームを取ってみても、複合的なデータが余りに多すぎて、どんな組織でも一社単独では扱えません。そのためリーダーたちは、科学面で現実的に有利な分野の発見と、自分たちをより早くそこへ到達させてくれる技術的ソリューションの構築に取り組んでいます。

ギャップ解消の重要性

  • 発見の時代にすばやく動く。この業界は、早急にデジタル戦略を活用し、より優れた意思決定力と問題解決能力を強化する必要があります。ライフサイエンス企業が今日の課題解決のためのソリューションを実践する一方、業界の下位分野の企業が複雑なエコシステムにおいて基礎的役割を形成し始める中で、新たな技術的課題が台頭してきます。たとえば医療機器の製造事業者は、複雑な相互運用性と接続性の問題を克服しなくてはなりません。患者用の機器は、病院内の技術環境、リハビリテーション環境、患者の自宅の間を、どこへでも自在に移動して使われるからです。

運用面の整合とシナリオ計画策定に重点を置いた戦略的必須事項

回答者には、次の内容を自社戦略でどの程度優先化しているかを尋ねました(ビジネス上の優先度が中程度、高い、最重要優先度を選択した回答者の割合)。

回答者:ライフサイエンス企業の上級幹部250名

出典:Economist Impact Survey 2022

図2

 

特に優れている点

  • 運用面の整合に対する戦略的集中。 他の業界と比べ、ライフサイエンスは運用面と戦略面の整合に苦心しています。ただし心強い結果として、この課題に対処し、まったく異なる業務間での運用面の優れた整合を促進するための、明確な戦略的コミットメントがあります。回答者の実に38%が、これがビジネス上の重要な必須事項であるとの信念を持っています。このことは、リーダーたちが市場投入された新規および既存のソリューションの経済性を精査していることに鑑み、重要な意味を持ちます。リーダーたちは、新たな技術やアプローチが加速度的に台頭する中で、企業全体に新しいプロセスを計画しているのです。

長期的な課題

  • 長期的な計画と短期的な変動性のバランスを取る。この業界は、科学的、技術的発見や次々と変化する規制構造によって向かう方向が一晩で変わりかねない、変動性の高い市場環境に立ち向かわなくてはなりません。こうした環境では、最上位戦略を運用面の整合性に落とし込むことは、最も先進的な企業にとってさえ課題となります。その結果、多数の企業が、より優れた整合性を強く求めつつ、猛スピードで進む業界の中で長期的戦略とアジリティの必要性とのバランスを取るのに苦労しています。

ギャップ解消の重要性

  • 全員が明確なミッションと足並みを揃える。 ここで説明している断絶により、重大な文化的課題が生じています。サイロ化した組織構造と連携性に欠ける業務環境を抱えるこの業界は、目まぐるしい変化のペースについていくための変革に対する重圧下にあります。運用面および戦略面の整合性、長期的な計画、デジタルファーストのビジネスモデルが持つ重要性の増加は、業界全体のリーダーが変化を強く望んでいることを明確に示すものです。

戦略と人に関する課題の重要な転換

回答者には、昨年における新たなプロセス、製品、サービス、技術の実装にあたり、最も重要だった課題を尋ねました(それぞれの課題を選択した回答者の割合。課題は5つまで選択可)

回答者:ライフサイエンス企業の上級幹部250名

出典:Economist Impact Survey 2022

図3

 

特に優れている点

  • 焦点を絞った市場参入戦略。ライフサイエンス市場は、広大である一方、無数の個別機会によって構成されています。たとえば腫瘍学だけでも、そこには数千もの診断要件に加え、増加する一方の疾病に対応するために普及が加速する治療法一式が含まれています。結果として各企業は、自社が最大の競争優位を発揮できる市場領域にピンポイントで的を絞り、明確かつ対象をはっきりと定めた最上位戦略を組み立てています。

長期的な課題

  • 最上位戦略を社員に浸透させる。ライフサイエンス企業は、立派な戦略を掲げつつも、それを社内全体に伝える段では苦心しています。明確な戦略の欠如に悩む企業は3分の1近くに及びます。また、コミュニケーションや調整のための効果のない取り組みが変革の妨げになっているとした企業は、回答者の4分の1を超えています。明確な戦略の欠如に悩む企業は3分の1近くに及びます。また、コミュニケーションや調整のための効果のない取り組みが変革の妨げになっているとした企業は、回答者の4分の1を超えています。

ギャップ解消の重要性

  • 短期ニーズと長期目標のバランスを取る。ライフサイエンス企業は、最上位戦略を全社的に機能する極めて明確なビジョンへと落とし込み、社員全員が企業としての道筋を理解できるようにしなくてはなりません。より明確で首尾一貫した戦略の構築によってこの業界は、変革への準備をじっくり整え、実現に向けた時間が不十分、優先順位付けで対立が生じる、といった主要課題を解決することができます。

コグニザントの委託によりEconomist Impactが実施した調査が示すとおり、ライフサイエンス業界は強力なデジタル戦略の恩恵を受けられる可能性があるものの、業界内の多数の企業が、市場目標を明確なゴールや目的と整合させることに苦心し、将来の繁栄に向けて克服しなければならない多数の文化的課題をますます悪化させている状況です。

詳細については、当社ウェブサイト 最新ビジネスのセクションをご覧いただくか、当社までお問い合わせください

本ページに記述された見解や意見はコグニザントのものであり、必ずしもEconomist Impactの見解や方針を反映するものではありません。使用されているデータは、2022年初頭にコグニザントの委託で実施されたEconomist Impactの経営幹部向け調査を出典とします。

本記事は、コグニザントのLife Sciences PracticeのAmericas Strategy & Innovation LeaderであるBrian Williams、コグニザントのNorth America Life Sciences PracticeのConsulting LeaderであるKevin Molloy、Cognizant ResearchのSenior DirectorであるOllie O’Donoghueが執筆しました。